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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

銅愛好家

「ブエナビスタ」先輩には自分が競馬が好きな事がバレてしまったがそれでも職場ではあまり競馬の話題は出せずにいる。先輩にも言われたように競馬という自分の趣味について恥ずかしいと感じる必要はないのである。とはいえTPOを弁えなければ競馬の話は無粋になってしまいがちである。やはりギャンブルに関わる事だし、それで身を滅ぼすような話も聞くし、会社の金を横領して競馬につぎ込むというような悪い話もニュースになったりする。JRAが作ろうとするクリーンなイメージは、生々しい実態を知る者にとっては表面に張り付けただけのもののようにさえ見える。


と、真面目な話を考えている今も、私は今週のレースの事で頭が一杯である。話は出来ないけれど、自分の頭の中では幾通りものレースのシミュレーションが行われ思い入れがある馬や騎手が勝つシーンを思い浮かべたりしている。ちなみに私の場合、馬券は専ら応援馬券である。それでもいいと思っている。その代わり、私は好きになった馬を一生懸命応援するのである。だから、馬の名前のあだ名をつけたりするくらい、その馬の個性を知れるのだ。


「先輩。今日飯どうします?」


個性的だと思った馬の一頭である「エアシャカール」の名をほしいままにしている(?)後輩ともう一人、私の脳をもってしてもこれといった特徴がなくて何と形容したらいいか分らない状態にある後輩…牡。眼鏡を掛けていて、仕事はきっちりと仕上げるタイプで、顔は普通。真面目でお堅いかと思われがちだがこうして「エアシャカール」君とつるんで気軽に声をかけやすい。何でも昔サッカーをやっていたそうで結構身体ががっちりしている。


こういう情報があるけれど、だからといって決め手となるような個性がない為にどうしてもあだ名がつけられないでいる。折角だから今日は彼を研究してみようと思う。


「よし、外で食べて来よう」


「何食います?」とエアシャカール君。「俺定食が良いな」と眼鏡君。ここでは『眼鏡君』と呼ぶしかないのだが、非常に多くの競走馬の中には何かしら彼とリンクするような馬もいるに違いない。というわけで『眼鏡君(仮)』と呼ぶことにする。私達は近くの定食屋で昼食を摂る事にした。


「あのさ、○○君」


私は眼鏡君(仮)に話しかける。


「なんですか?」


無難なところから攻めるのがよさそうである。


「○○君って、趣味とかある?」


「趣味ですか…あるといえばあるし、ないといえばないですね。サッカーは好きですけどね」


「そうか」


まさかサッカーが好きというだけで『サッカーボーイ』にするわけにはいかないだろう。


「あ…」


と「エアシャカール」君。


「こいつ、ゲームとか凄い上手いんですよ。最近はスマホのアプリのゲームとかやってますよ」


「へぇ~意外だな。どんなのやってるの?」


「音ゲーとかですね」


音楽のゲームの事である。意外な趣味だったし、音ゲーとかはかなり個性的といえるのではないかと思ったのだが、馬に関係づけるとなると難しい。苦しいが浮かんだのは『バランスオブゲーム』とか…って全然関係なさそうだし、私の中のルールで安直なのは「×」にしているのである。


決め手に欠ける…。



ん…?何かちょっと思い浮かびそうな気がしたのは何でだろう。…まあいい。そうこうしているうちに定食屋に入店していた。顔馴染みになっていたので私は「いつもの」で注文し、あまり来たことがなかった「エアシャカール」君はさんざん迷った挙句「日替わり定食」。そして眼鏡君(仮)は何度か来たことがあったのか、それとも食べるのを決めていたのかすぐに「焼き肉定食」と言って注文した。料理を待つ間、もう少し何か情報が無いかと思って別の角度から攻めてみる事にした。


「最近テレビとか見てる?」


何故か「エアシャカール」君がニヤニヤして答える。


「実は最近ですね…先輩の影響で競馬中継とかみちゃったりしてるんですよね」


「影響って、そんなに話してないけど…」


「オルフェ―ヴルのラストラン見て感動したんですよ。ドラマチックなところはやっぱりステイゴールドと似てるんだなぁ…」


彼は浸っているが私が「エアシャカール」君などと呼んでいると知ったらどう思うであろう。眼鏡君(仮)は流石に喰い付いてこない。私は「そうだね」とあっさり目に相槌を打って、眼鏡君(仮)が話すのを待った。


「俺は…お笑いとか見ますね。最近少なくなったけど、コントとか好きですよ」


「へぇ…そうなんだ」


これまた一般的な好みである。コントと言うのは珍しいような気がするが、これと言って決め手がない。でも良いところは外さない。



決め手がない…外さない…。




私はこういう馬を何頭か知っている。基本的にそういう馬はブロンズコレクターとよばれ「3着」をゲットする力に長けている。ステイゴールドは「2ゲッター」過去があるが、それはこのブロンズコレクターの上位版といったところだ。そうか、彼は…。


「ロイスアンドロイス…」


気付いた時には私は馬名を呟いていた。そう決め手に欠けるが、良いところ(3着)は外さないロイスアンドロイスは人間で言うと彼のような人なのかも知れない。


「ああ、ブロンズコレクターの…」


予想もしなかった眼鏡君(仮)の呟き。


「え?もしかして競馬知ってるの?」


「ゲームで齧ったことがありますね。ギャロップレーサーとか面白かったですね」


「…」


ここぞというところで外さない彼はまさにロイスアンドロイスそのものだなと思った。

最強牝馬

人間の世界は、日本について言えば男社会と良く言われる。確かにそう見る事で説明される世の中の事はある。ただそれは大まかに見た場合であって、実際上は女性も普通に社長さんをやっていたりして、特に野心が多いと言うわけではない私から見ると、とにかく何が何でもやろうと思えば、そしてその気持ちがずっと続けば能力のある人は何でも出来そうな社会なのではないかと思えてくる。


競馬の世界では時として恐ろしい女…「牝馬」も現れる。恐ろしいほど強い馬は、「牡馬」だけではない。実際、ハンデもあったかも知れないが今年の凱旋門賞を勝ったのは3歳という若い、ある意味『少女』と言っても良いような牝馬であり、異論はあるが日本で一番強いであろうと思っているオルフェ―ヴルに完勝とも言える差をつけている。世界の競馬でもそうなのだから日本の競馬でも怪物は存在した。その代表格と言っても良いウオッカや、今日そのあだ名のついた先輩の事を喋ろうと思っている「ブエナビスタ」がいる。


ブエナビスタの現役時代はとにかく安定していた。時に足元をすくわれた事もあるが、成績は『優等生』ともいうべきもので、何よりもその強さは圧倒的な『切れ味』にあった。『切れ味』というと刃物をイメージするかも知れないが、競馬においては最後の直線勝負における瞬発力の高さを意味していて、牝馬はそれに優れる場合が多いのだが、ブエナビスタはそれに加えて絶対的な能力の高さを有していた。普通に勝負した場合は一流の牡馬でも叶わない可能性がある。実際、天皇賞やジャパンカップでの強さは、「ああ、最強馬はブエナビスタなんだな」と思わせるものだった。


…と競馬の話をしているのであるが、肝心なのはこのニックネームを与えられた、というか私が勝手にあたえた「ブエナビスタ」先輩である。馬のブエナビスタを思わせるように、職場では絶対的な信頼を勝ち取っている彼女は、私に対しても手厳しい。


「○○君(私の名前)、これも頼むわね」

「は…はい」


取り仕切るのが上手い彼女はいわゆるチーフで、仕事を上手く分配して、確かに全体の様子がよく見えている人である。私が丁度一仕事終えたのを見計らって次の仕事に誘導する辺りは見え過ぎているのではないかとさえ思えてしまう。この前話した「アグネスフライト」君や「エアシャカール」君は憧れの先輩だと言うが、彼女の有能ぶりを見るとなかなか迂闊に声を掛けてはいけないように思えてしまう。有能な女性がみんなそうなのかは分からないが、とにかく表情がキリっとしていて男から見ていても格好良いと思う。これは酒の席の事である。


「ぶ…いや、あの先輩」


思わず「ブエナビスタ」先輩と言いそうになるのを堪えて、私は先輩に話しかける。


「なに?○○君」


「先輩は趣味とかってあるんですか?」


先輩は私生活もきっちりしてそうだなと思うが、逆にいうと趣味とかを楽しんでいるのがイメージできない。ちょっと気になったのである。


「あるわよ。勿論」


「どんなのですか?」


「最近はジョギングね。走るのもともと好きだから」


「むかし何かやってたんですか?」


「う~ん。学生時代はあんまりね。どちらかというと文化系だったし」


どうやらジョギングは本当に趣味らしい。ジョギングしているからか、スタイルが良いのでやっぱり格好良い。


「走るのですか…俺は走るの見るのは好きなんですけどね」


「マラソンとか?」


「まあ…マラソンのようなものでもありますね」


「ようなものって、他に何かあるっけ?」


「まあ、ありますよ」


競馬とは言えないのは、昔一度真面目な女の人に「競馬が趣味で」とか言ったら凄く引かれたのを思い出したからである。


「あ…そういえば…」


「え…分かったんですか?」


「多分だけど、○○君、お馬さん好きでしょ?」


「ど…どうしてそれを?」


馬で頭が一杯だが、その事はかなり入念に隠していたつもりだったから、どうやってそれを知ったのか、分らなくて私は焦り出した。


「『ステイゴールド』よ」


「え?」


「私、最初『ステイゴールド』って普通に英語の事だと思ってたんだけど、△△君(「エアシャカール」君)が『先輩からステイゴールドって馬の事教えてもらったんですよ』って話聞いたのよね」


「あ、そうだったっけ…」


流石に職場の事がよく分かっている人である。そして何より勘が鋭い…たったそれだけの情報から私の競馬好きを見破るとは、頭の「キレ」が「ブエナビスタ」のようである。「ブエナビスタ」先輩は続けていう。


「○○君。多分、競馬が好きな事を明かしたくなくって隠しているんだと思うけど、私は自分の趣味は堂々と語ればいいと思うわよ」


「でも前、競馬が好きって言ったら女の子に引かれちゃったんですよね…」


「そう言う人にはそういう風に言わせておけばいいのよ。っていうかね、私は競馬にあんまり抵抗ないの」


「どうしてですか?」


「実はね、私のお父さん、結構競馬好きだから。そして私はそんな父の事を同時に尊敬している。父はちゃんと自分で決めて競馬と付き合っているから、家族に迷惑なんてかけた事ないしむしろ、レースに一喜一憂している父は輝いているの。男の人って、そういうのが必要だと思うのよ。私は」


「!!!!!」


私は人知れず感動していた。ちょっとウルッときてもいた。一方で、私は馬のブエナビスタの父を思い出してちょっと笑い出しそうになっていた。『スペシャルウィーク』みたいな人なんだろうなとか想像しながら私は言う。


「先輩はブエナビスタみたいな人ですね」


先輩も一瞬何の事を言っているのか分からなくなったらしく、頭にはてなマークを浮かべたように、


「え?どういう意味?」


と言った。ただ一言、「凄い」って事ですよ、先輩。

超高速粒子

「アグネスフライト」君と昼飯を食べに行った時の事。

「先輩。訊いて下さいよ!こないだ部長に呼び出し喰らって、もう凹んじゃいました!!」

「凹んでいるというか。何か苛立ってない?」

「だって、あれはしゃーないですって。先方の方にも落ち度がありましたよ」

「でもな…そこはあれだよ。こちらがカバーしなきゃいけないんだ」

と宥めると、「アグネスフライト」君は深く溜息をついた。まだ納得いかない感じである。「アグネスフライト」君は新入社員の中でもある分野では優秀な方なのだが、総合的な能力で「エアシャカール」君に一歩リードされているという印象を持たれている。これは私だけの意見ではなくて、バリバリ仕事が出来る「ブエナビスタ」先輩からの評価でもある。ちなみに現実の競馬ではブエナビスタの方が年下なんだけど、牝馬で圧倒的な強さを誇った馬として同じ年代に生まれていたとしてもブエナビスタには勝てないイメージがある。その先輩が下した評価と一致したから、私の見立ては間違っていないと思う。


「アグネスフライト」君は頭のキレが良い方なのだけれど、相手にも同じ理解力を求めるきらいがあって、周りと衝突しやすい。そこでもうちょっと辛抱できるようになれば、仕事も上手く行くのだけど、若いからか途中で粗さが目立ってしまう。そこは一応伝えてはいるのだが…


「でも、先輩。仕事はパッパっと終わらせたいじゃないですか」

「継続も力だよ。長期的に見れば、上手く付き合う事で利益が上げられる事もある」

「…まあ、そうっすけど」


「アグネスフライト」君は、なんとなく末っ子のイメージをもってしまう。本人に訪ねてみる事にした。


「君ってさ、もしかして末っ子?」


「え?いや、弟が一人ですよ。それが何か?」


「それは本当かい!!!!」


分る人には分ると思うが、私は猛烈に「弟をスカウトしなければならない」と思ってしまった。いや…でも弟だからと言って、必ずしもあの弟と同じとは限らないか…というより、「アグネスフライト」君はアグネスフライトじゃないわけで…


「一応聞くけど、弟って今何してんの?」

「え、大学に通ってますね」

「…もしかして、凄く優秀だったりする?」


普通は弟の事を詮索したりはしないから、「アグネスフライト」君も返答に困っているようである。でも私が熱心に聞くものだから答えてくれる。


「まあ、優秀っていえば優秀かな。なんか将来は研究者を目指しているとか…でも今は厳しいって言ってましたね」

「あ、そうか」


そりゃあそうである。そこまで『あの馬』と同じだったら凄い。


「ちなみに、何の研究?」


「たしか、物理だったかな…」


微妙に合っているような気がするが、物理関係でも「タキオン」と「プロトン」という二種類の可能性があるのでそこはどうなのだろう…


「あの…もしよかったら研究テーマとか教えてもらえるかな」


「アグネスフライト」君は疑惑の眼差しを私に向けている。


「あの、まだ大学一年ですよ」


「あ、そっか…残念」


「え…何が?」


「あ、いや。こっちのこと…」


しかしながら何かを諦めきれなかった私は「アグネスフライト」君に伝える事にした。


「あのね、もし弟君が研究テーマに迷っているようだったら、「タキオン」が良いよって言っておいて…あ…でも現実的な話をすれば「プロトン」の方なんだよな…」


「へぇ…先輩物理に詳しかったんですか」


「ううん、全然」


「はい?」


頭のキレが素晴らしい「アグネスフライト」君でもさすがにこればっかりは何の事を言っているのか分からなかったようである。

空気釈迦

サラブレッドはみんな個性を持っている。完璧な成績を残す馬、二着ばかりで勝ち切れない馬、忘れた頃にやってくる馬、気性が激し過ぎていつもみんなを困らせる馬。


私はひそかに同僚に馬の名前のあだ名をつけるのが好きである。直接呼びはしないけれど、心の中で呟くのだ。例えば、朝一番に会社に出勤するけど、飲み会になるとすぐに潰れる「ツインターボ」君。男勝りで仕事をどんどんこなしてゆく才女の「ブエナビスタ」さん。同じ女性でも、天才肌でムラがあって酒も強い「ウオッカ」さん。恰幅が良い「ヒシアケボノ」先輩、などなどである。


ある日、その風格から「シンボリルドルフ」の異名を与えざるを得なかった部長に何故か後輩の「エアシャカール」君が呼び出された。エアシャカールには申し訳ないが、入社一年目の中でも一応一番出来る人なのだがこの後輩の世代の全体的なレベルの低さも手伝って、この人ははいつも代表として尻拭いをさせられていて、その姿を見て「エアシャカール」を思い出したので、以降そう呼ぶことにしている。その「エアシャカール」君が同じく同期のライバルであろうと思われる印象の薄い「アグネスフライト」君との仕事先でどうやらちょっとしたミスをしてしまったらしい。先方から電話が入ったらしく、たまたま外に出ている「アグネスフライト」君は運良く回避したみたいである。


「君ね、もうちょっと注意する癖をつけないと、これから大変になるよ」

「はい…」


そういえば私も一年目はあんなだったような気がする。「エアシャカール」君が肩を落としてこちらにやって来る。


「先輩…俺自信なくしちゃいました」

「まあ、大丈夫。これから成長して…」


慰めようとしたところ、馬の方のエアシャカールの成長力について疑念が擡げてくる。エアシャカールは古馬になって正直言って活躍していない。成長力があったろうか?


「いやいや…それは馬の事だ」


「はい?何の事ですか?」


「いや、こっちのこと。気にしないで」


競馬については知らないだろうから、「エアシャカール」君と言っても意味不明だろうけど、ググられると困る。何かこういう時にいい方法はないだろうか、と頭を捻らせていると、咄嗟にいいアイディアが出てきた。これは行ける。私は思い切って言ってみる事にした。


「ねえ君、ステイゴールドって知ってる?」


「え?なんですか?英語?」


「いやね、俺の好きな競馬の馬にステイゴールドって言うんだけど、この馬はね一生懸命頑張って最後に報われた馬なんだよ」


「は、はあ…」


手応えが悪い。


「と、とにかく、最初はポカがあっても、最後に大きくなっていけばいいんだよ」

勢いで押し切った感じがあるが、その勢いに気圧されたのか、


「わ…分りました。」


と「エアシャカール」君は納得した。実際こういうところで納得してしまうところがエアシャカールっぽいんだけど…この話には続きがある。後日「エアシャカール」君が私のところにやってきて、


「先輩!!俺ステイゴールドになります!!」


「は?」


今度は私が呆然としている。


「俺、ステイゴールドって馬調べてみたんです。そしたら、この馬ってあのオルフェ―ヴルの父親ですよね。なんか俺の理想に近いんです。徐々にみんなに強さが認められていって、大団円みたいな…」


「お、おう。そうだな、それがいいよ」


彼は目をキラキラさせて言う。私がまさか「エアシャカール」君と呼んでいるなんてことは言えそうにない。でもエアシャカールの肩を持てば、彼だってGⅠ二勝もしているのだ。「エアシャカール」君頑張れ!!
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ブログには珍しく二人の管理人で更新してゆくブログです。

二本松のこと、競馬のこと、これから手探りで何かを
やってゆこうと思っています。




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