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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

はずれのゆき

何処かに待っている、そんな何かに。


未だに夢を追い続ける気分というのか、現実に半ば打ち砕かれながらそれでも尚その向こうに進もうという気持ちは少なくなっているのかも知れない。進んで辿り着くところが例えば「廃墟」のような匂いのする場所だったとしたら。



廃墟というか、静かな場所。別にそこが好きだというわけでもないし、そこに居る用があるというわけではない。今日車で移動中に一瞬道に迷ってたまたまそこに入り込んでしまったのだ。この世界に、特に現代の日本に「森」と呼べるような所があるというのも何処か不思議なのだが、この辺りでよく見掛ける小高い山とかすっかり収穫が終わってしまっている田畑とか、そういう人の手が加えられている場所ではなく、まだ手付かずのまま置かれているような観さえある小さな森があったなと認識したところから、結局引き返せそうな道がないまま行きついてしまった知らない場所。特に何かがあるというわけではないけれど、行き当たってしまった工業団地の端。その向こうに進もうとすれば何処かに繋がってはいるけれど多分全然行く気のない町までかなり長い距離を走りそう。



一旦そこで車を停める。使われなくなった材料や妙に開けた空間が『辺境』という感じを醸し出している。地元にこういう雰囲気の場所があるとは思わなかったけれど、そもそも私は工業団地のある場所に用があったのだ。というか、あまり説明したくはないが工場の下見である。



転職を考えてもこの辺りだと工場くらいしかないという話もあながち間違いではないのだろう。自分に合うのかどうかは分らないけれど、とりあえずそういう仕事をやってみても悪くはないというか。まあ微妙な判断だけれど殊仕事に於いてはやりたい事がはっきりとしていない自分にとっては一つの選択のようにも感じる。地元に居てもそういう辺境には目が行かなかったのもあるけれど、そこまでの道は新鮮だった。あと子供の頃に感じたようなちょっとした不安のようなものもあって、知っているようで知らないんだなと改めて感じた。その不安はまあ的中したようなもので、曲がる場所を間違えて直進するしかなかったので行きついてしまったその開けた場所で一度車を降りて冷静に考え始める。



「ほんと何にもねぇな」


都会から来た人がこの町に感じるそんな印象とはまた違うレベルの「何もない」という感じ。それでも人がそこで過去に何かをしていたというのが不思議な気がする。縁がなければ来ない。人気がないのもあって<もしここで何かあったらどうすんだべ>というような考えが一瞬頭を過ぎる。そもそもそんな事すらない静けさで、困る事があるのだったら車が故障する事くらいだろうか。



スマホで地図を開いてナビを見ればすぐに正しい方向が分った。最初からそうしていればいいものを、大丈夫だろうとタカを括っていた。普通に携帯は通じるから何も心配はない。さすがに辺境と言っても現代の技術ではそこもカバーしてしまうという事が比喩としても事実としてもそうなのだ。技術に救われて誤魔化されている部分はあるが自分はもともと器用な方ではない。どちらかというと方向音痴なところがある。むしろこういう時にそれを思い出すというか。



とにかく引き返す事が必要だなと思った。その時、辺りで「ガサ」という音が聞こえた。その方向には猫がいた。あまり見栄えは良くないが体格のよい茶トラの猫。警戒しているのかこちらをじっと見つめて立ち尽くしている。本来的には部外者である私は刺激しないようにそっと動いたけれどその動きでもやはり不安にさせたのか、瞬時に目の前から居なくなってしまった。


「こんなところにも居るのか…どうやって」


恐らくは野良猫だけれど、その生態は実際よく分からない。生きていけるという事は生きてゆける方法があるのだろうし、むしろ天敵が少なく車通りも少ない場所なので安全に繁殖できるのかも知れない。それでもここは猫にとっても寂し過ぎるようにも感じる。



『寂しい』という言葉が出かかった時、私は自分がこの場所に感じている一つの感情に気付いた。



考えてもみれば秋の終わりのこんな時期に、寒空の下一人迷っているような状況は冷静に考えて寂しいのかも知れない。まあ大人なのでそういう時もそういう経験をしなきゃならない時はあるものだと納得させるけれど、ふと立ち止まってしまうと途方に暮れてもおかしくないような日々だったかも知れない。



夢があった。



そう言えば聞こえがいい。でも夢を追っているのかよく分からなかった。本気で夢見ているならそれを追っている筈だろう。でもいつまでたってもどうしたらいいか良く分からなくて、『夢を追う自分』に没入する事ができない。なのに、何かきっかけがあるとつい思い出してふらっと動いてしまう…動かされてしまう自分もいる。アーティストの音楽に、まだ刺激を受けている自分。夢を実現した人の話を参考程度にも聴いている自分。でもこの歳のこの状況で、不満はあっても十分楽しい時間がある人生でそれ以上を望んでいいのかどうか何となく分らなくなる事がある。



誰も何も言っていない。逆にこういう状況だったら追ってもいい。それをしないのはただ自分がそれがしんどいと思っているか、そうしなくていいと思っているか、そう解釈するしかない。今の生活でも『その気になれる』事くらいならあると思う。『何でもいいから自分の店を持ちたい』という漠然とした夢は、自分の思い通りになるような店で仕事をすればある程度満たされるのかも知れない。そういう道ならあった。でもそれではなかった。




黄昏ていてもしょうがないので車の中に戻って移動するシミュレーションをしてみようと思った。ちょうどその時、ひらひらと舞う小さな白いものが見えた。


<ああ、そういえば今日は初雪になりそうだって言ってたな>


短時間で気温が変わったわけではないのに妙に寒々とした気持ちになる。けれど、その寂しげな場所でその一つの小さな煌めきは、何か別な情緒を自分に加えた。


「そういえばあの日もこんな事があったな…」



私はもう少し雪国のある都市に居た事がある。その時はまだ学生で、知らない街を冒険したい気持ちがあって自転車でかなり外れの方に移動したのだ。辺境に向かえば向かう程に、帰ってくるのが大変になるという気持からだろうか、何か不安定な感じがあって当時はそれを楽しんでいた。そしてまさにその街には似合わない場所に出たなと思ったら、そこに既に閉店して久しい倉庫のような店があった。単純な発想で想像すると外れだから人があまり来なくてそうなったのだろう。物寂しいなと他人事のように思っていたら雪がパラパラと降ってきた。



講義のない平日の昼間にそこに居合わせた自分に対して「何をしてるんだろう」という気持になった。でも、そういう場所…ある筈なのに誰も見ていない光景がこの世にあるんだなと思って、不思議な気持ちがした。



それが何だというのか、意味を問い続けても何かが分かるという事ではない。ただある。



今、思い出したあの光景と今の光景は違うけれど何かが同じというか。しかもそれを感じているのはこの世に自分しか居ないのだなと思う。生い茂る雑草や、ここにさえあるゴミとなった何か。言いようのない気持ちが心を占めている。寂しさだけではないのかも知れないなと。




車のエンジンを再び入れる。ここでこの気持ちを知るのは自分だからなのだ。同じようにもしかしたら自分だから出来る事もあるのかも知れない。そんな事を考えながら。
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