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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

新米の季節

後ろは向いていない。けれどそれが前なのかと言われれば…



十五夜を過ぎ惚れ惚れするような田舎の夕刻の情景に、見慣れているものも僅かな光の加減で幾らでも新鮮に映るのだと芸術っぽい事を考えながら帰り道を歩く。ついこの間まで思い出に残るような夏にしたいと思っていたのにいつの間にか今月は一杯やりたいことがあるなぁと切り替わってしまっている事に気付く。言わずもがなの真理なのか今日も今日の風が吹いて、それが数日前とは違う心地よく穏やかなものだったら気分も変わってしまう。


これは多分だけどの話。多分、季節を十分に味わいつくさないままに次の季節がやって来てしまっているのではないだろうか。少し浸りたいのに、時は待ってくれやしない。別に次の情景がやって来てもそれはそれで良いと思うからそんなに悪い話でもないのだが。



そういえば浸れないのは休みだってそうかも知れない。たまの休日に何もしないままゆっくり過ごすかと決めたとしても、ネットで面白い情報を発見してしまうと見ようと思って出歩いたり、いつの間にやら「勿体ないな」と考えを改めていたり。


「腹減ったなぁ…」


家に帰って明日までは何もしないと決めた矢先に腹が空いて何処か外食にでも出掛けたいと思ってしまう。ダメなやつというよりは、人間の性がそういうものなのだと最近では諦めている。そういえば数か月前のツイートで、


『ちょっとダイエットをする為に今年は『食欲の秋』にはしないつもり』


と宣言していたくせに結果はこれである。意志なんてそんなもん…と言いたくはないけれど、本当にその時にそう決意しているかどうかの答えがただ行動として顕れているだけのようにも思える。


<こんな事言ったときは、今の俺の気持ちなんて想像出来てないんだよ>


密かに心の中で過去の自分にそう文句を言いつつ地元で有名なラーメン屋に行く決心をする。何か違う気もするが目の前にあるものに惹かれてゆくポジティブな発想なのではないかと思える。でもそれが本当に前なのかどうかはよく分からない。



良くは分からないがもう一度窓の外を眺めてみる。もうさっきとは違うグラデーションだけれど確かにさっき思ったように純粋に良いなと思える景色の山際である。



・・・・




何もしないというのも本当に何となく勿体ない気がしたので外に出て歩き始めた。『散歩』なのかも知れないけれど、ただサンダルを突っかけてふらっと出てしまっただけのような趣がある。山とは反対側の蒼くなり始めている向こうの空を、そこにうっすら浮かぶ月を目指すように歩みはしっかりしてくる。


「じゃあ、あの橋までは歩いてみようか」



誰に言うでもなく、自分で自分の意志を確かめる。珍しいのかどうなのかこの時間にランニングをしているおじさんが追い抜いて行く。


<そういうのもありだよな>


と漠然と納得する。何がありなのかは説明しにくいけれど、多分「そういう生き方」だろうと思う。その人がどんな想いで走っていて、家に帰ってからどういう生活をしているのかぼんやりとだが想像出来るような気がする。帰ってから汗を流すために湯船にじっくり浸かって…そして一杯のビールを…



いつかはやってみたい気がする。でもいつになるのかは定かではない。



そんな言葉が頭に浮かんだ頃に目標としていた橋に到着した。何か感じるかと思ったけれど特に感じない。だけど「感じない」というその事が妙に印象的だった。




再び家に戻り夕飯の支度を始めた。不意に数年前の事が思い出された。


『へぇ~料理上手いんだ!凄いね!何でも出来るじゃん!』


それは何の事はない瞬間だった。今は離れてしまった学生時代に少しの間一緒に過ごしたその人は何かにつけて主夫の才能があると褒めちぎっていた。結局それが別れる時の、


『あなたは私が居なくても大丈夫だよ思うよ。こんな事言うのも変だけど、元気でね』


という台詞の伏線になったんだなと時々思い返したりして自嘲してみることがある。もうその人への想いはそれほど残ってなくて、今は今の生活が気に入っている。そういう意味では前を向いているのかも知れない。


でも、そうやって生き続けることが果たして前なのかは良く分からない。時々迷う。もしかしたら今度こそ自分の何かを委ねられるようなそんな相手が見つかるのかも知れない。それもまた前なのかも知れない。



漬け物を半分に切ったところで包丁が止まる。



「…でも」


そう言って再び漬け物を刻み始める。多分だけれど迷いはするけれど立ち止まりながら少し考えこうやって過ごし続けて自分で何かを感じてまた動いてゆくという事は間違いなく前だなと思う。



やはりリズミカルに切っていると料理が出来あがる。そして地味に嬉しい新米の季節。


「うん…食欲の秋にしないなんていう方が馬鹿げている」


その日の夕飯は妙に美味しかったのを覚えている。
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