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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

秋は読書に

『15℃』。部屋の気温の表示である。それを寒いと感じるのか過ごし易いと感じやすいのかは人それぞれとはいうものの、統計を取ったりしたら多分「肌寒い日」が共通認識と言って良いのではないだろうか。残暑などもはや過去の話、秋の深まりとともに忍び寄る寒気が町を包む。


『まあ暑いのはそれはそれで厭なんだけどな』


『それもそうだな。じゃあまた今度』


そんな会話で友人との電話が終る。連休で久しぶりに会ってみて仕事の事とか人間関係で少し面倒くさいんだよなんて話していたあたり、かえって順調に過ごしているように感じる。私はといえば相変わらずの煮え切らなさで、『職場で気になる人がいるけど歳が離れてるんだよな』なんて本気か冗談なのか分らないような事をペラペラと喋ったような気がする。良くも悪くも分別がついて、相手が自分に期待している事がそんなに自分に都合よくはないとか、誰しも利害関係がどうとかけっこう気にして動いていると分ってくると、特別な感情はそんなに期待しなくなる。


特別な感情?


なんだそれは、と言いたくなるような自分という存在への思い入れである。要するに私が特別なのだと考えてくれている人はそんなには居ないという事である。肉親や『親友』と呼べる仲を除けば、あとはそこまで意識しなくていいのだと、経験が訴えている。それは冷ややかな捉え方だと言われるかも知れないが、私だって好きでそうしているわけではない。そこそこ切ないし、哀しい部分がある。



もう一度顔を上げて『15℃』という表示を眺める。寂しい気持ちになるのも幾らかはこの気温のせいだと思う。ネットで人々のつぶやきをつぶさに観察していても、それは確かに誰に向けてと決まったつぶやきではないけれど、だからと言って自分に向けられたものでは必ずしもない。意識される事の尊さは、ウザったさから離れてみてようやく実感できるというか。


「さてと、何すっかな…」


そう言いつつ意味もなく冷蔵庫を開ける。習慣で取り出したペットボトルの水を口に含み、また仕舞う。連休の最終日、する事もないけれど何かはしていたいなと思う。


<あの本でも読むか>


読書を秋を意識したのかしてないのか、先週買った小説をじっくり読んでみようと思った。それほど強い思い入れがあるというわけではなかったが、結構好きだった作家の新作がたまたま書店の目立つところに置いてあったのである。書店といえば聞こえはいいが、地元の数少ない書店はむしろレンタルDVDの店という感じである。もっとも、本を買おうとして入店したわけではない時に案外良い本が見つかったりするから丁度良いのかも知れない。


「…ふう」


リビングで読んで30分程が経過したのを時計で確認する。読むモードになれば没頭できるけれど中盤の展開でなかなかヘビィな場面があったので、割と体力を遣う。『読む』という事は、自分の中に無いものを取り入れる事のように感じることがある。登場人物の主張に『アク』があると、架空の人物とはいえ自分の中に何かを残すような気がするのだ。


「よし…」


せっかく良い所まで読んでしまったのであとは一気に読んでしまおうと思った。



と…その時、スマホにメールが届く。宛名は…。


「あ、佐々木さんか…」


それは友人にも話した同僚の年下の女の子だった。どうやらちょっとした仕事のメールで、要旨は明日からの予定についての確認だった。『要旨は』と言ったが下までスクロールすると、こんな文がある。


『そういえば鈴木さんって今日は何してるんですか?』


それは多分何という事のないちょっとした興味で訊いた文だろう。それでもこの人が気になっている事は確かだからなるべく丁寧に答えようとこんな風に返事する。


『分かりました。明日からまたよろしくお願いします。ちなみに今日は読書をしています』


余計な事を言うとウザがられるという思い込みで、結局こうなってしまうのだ。まあこんなもんだろうなと思って読書を再開すると、主人公がある女性の為に必死に動き回っている場面になる。思わず引き込まれそうになるとまたしてもメールが届く。同じく佐々木さん。


『そうなんですか。私も今日は読書ですよ。何読んでるか聞いても良いですか?』


<おっと、思わぬ喰い付き>とも思ったが読書家は本の話となると結構興味を持つものだと思い直した。作家の名前とタイトルを書いたメールを返信するとすぐさま返信が来た。


『え!?私もさっき一冊読み終わっていまその本を読み始めたところなんです!!面白いですか?』


なるほど、著明な作家なのでこういう事も起こり得るといえば起こり得る。


『今後半だけど、引き込まれるよ。主人公に感情移入してるかも』


素直に答えると、


『あの、もしよろしければ明日ちょっとその本の感想詳しく聞かせてくれませんか?私本が好きなんですけど周りにあんまり本の話が出来る人が居なくって…』


という何か分かるような話。そもそも結構堅苦しい所がある職場で趣味とかを話せる感じではないように思ってたからお互いに知らない事も多いのかも知れない。


『良いですよ。じゃあ気合入れて読みます(笑)』


で、結論から言えば私は一気にその本を読み終えてしまった。作品のテーマ的にはミステリー要素があるけれど核は『恋愛』というか『愛』のようにも思える。『愛』ゆえにそうしてしまうというような人間性を描いたものと言えばそうかも知れない。佐々木さんとのやり取りもこの物語の状況をリアルに想像する手助けになったかもしれない。若干の別れはあるものの、ハッピーエンドと言ってよい結末にちょっとジーンとしてしまう。



「なんか、もうちょっと期待してもいいのかな…ほんのちょっとは」



それは本を読んだ感想なのか、はてまた。少し酸素を取り入れたいなと思って外に出る。間もなく日は暮れる。蒼白くなった空を見上げると、月が見えた。風は寒々としている。虫の鳴き声もそろそろ聞こえなくなるだろう。



本当は寒いのかも知れない。


<でもやせ我慢をすれば、気持ちいい風なのかも知れないな>
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