FC2ブログ

スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

麗しき人の夢 ⑨-2

世の中は新しく発表されたスマホのゲームでにわかに活気づいていたり、そのまま8月に入って4年に一度の祭典に熱狂し始めていた。政治も経済も芸能も目まぐるしく移り変わって行くような気持ちで過ごしていたお盆のある朝、私は一人ソワソワしていた。


「6時半だけど、まだまだだなぁ…」


忙しなく時計を確認するが「約束」の時間まではまだ先である。日曜日の昼下がりだというのに楽しみにし過ぎて全く落ち着けない。この歳になってもこんな気持ちになる用事があるというのも何だか不思議な気がした。


「あ、先に猫にご飯あげておくか…」


そう呟いて台所の小さな皿にいつものカリカリを一山盛る。猫のマロは普段よりも早い食事に少し戸惑いながらも後にとっておくような事はせずしっかりその場で食べ始める。そうしているうちにテレビで競馬中継が始まったので一旦落ち着いて観戦する。地球の反対側では熱戦が繰り広げられているけれど、地元からほど近く、今日会う事になっている友人Kが住むN県の競馬場でもまた熱戦が繰り広げられていた。


それこそN県のイメージは自分にとっては競馬場である。直線の非常に長い競馬場。いつか行ってみたい場所。漠然とそう思っていたけれど、何だかんだで機会がないと行かないままになるという事もよくある事なのかも知れない。友人Kはそこでどんな生活をしていたのだろう。すると、ツイッター上で地元の友人OからDMが届いた。


『今日ちょっと遅れるかも知れない。先に始めてていいよ』


話によると彼は数日前から妻の実家に行っていて今日戻ってくることになっていて、お盆の帰省ラッシュに巻き込まれるという事になるとやはり渋滞もやむなしという事だろうか。


『分った。駅前で待ってれば大丈夫だよね?』


友人Kとも駅前で待ち合わせする事になっている。長い事会って無いからお互い顔が分らなくなってないか若干不安だったが、


『うん、多分コンビニで待ってればいいと思うよ』


と返事が来た。競馬が終わった頃には暑さは和らいでくる。そのまま惰性でオリンピックの再放送を見始めてしばし熱中しているうちに良い頃合いになった。酒を呑むという事を考えると近くの駅までは徒歩で、そこから一駅で待ち合わせの場所にというのが考えていた事だった。田舎ゆえ歩く距離はそこそこあるけれど、そこで一つのツールが役に立つ。



「よし、出掛けるか。今日はお留守番な、マロ」



にゃ~と鳴いた猫の頭をこれでもかという程に撫でて玄関で見送ってもらった。外に出て早々私はスマホのアプリを起動させる。我々の世代には懐かしいゲームは今世界中を虜にしている。もはや社会現象と言えるだろう。


<タマゴを孵化させるという目的があると違うよな>


しばらく歩いてみて、比較的涼しいという事もあるけれどゲーム中のタマゴは歩いた距離で孵化させる事が出来るというシステムによってただ歩くことに目的が出来るという事による意識の変化もあり、歩くことが苦痛にはならない。なんとなれば歩いている途中にモンスターをゲットする事も出来るかも知れないという楽しみも加わる。なんだかんだでモンスターはゲットできなかったけれど、距離は稼げた。来るたびに若干マイナーチェンジを繰り返しているような気がする無人駅で電車を待つ。



電車に乗る事もめっきり少なくなってきたこの頃。高校時代は毎日お世話になったけれど、車内でスマホを使っている人が多いという光景は実はあまり慣れていない。ここにもあのゲームをやっている人が居るに違いないと思いつつ流れてゆく景色を見つめているとあっという間に目的地に到着した。駅を降りて、少し左右をきょろきょろと確認してそれらしい人が居ないのを確かめてから駅近くのコンビニの方に歩いてゆく。


電車の時間的には少し早く来るしかなかったのだけれど、スマホをちょっと見ながら駅付近に設置してあるゲーム内のアイテム補給地点をウロウロしていればいいかなと思い始めた。


…とその時コンビニの駐車場で一人の男性が車から降りてコンビニの中に入ってゆくのが見えた。


「あれ…もしかして?」


姿形には見覚えがあった。記憶とはちょっと違うような気もするけれど、私もコンビニの中に入って遠目から見ていると雰囲気的にどうもそれらしいという事が分った。意を決して声を掛けてみる。


「おう!K君?」


相手は冷蔵庫のジュースを選んでいる所だった。振り返ってこちらを見て、


「おお!!H(私の苗字)か!?」


「ああ~!!!」


言葉にならない声が漏れて、一気に昔の思い出が走馬灯のように蘇ってくる。久しぶりに会ったというのに、お互いに少し体型が変わっているというのに、やはりK君はK君で私は私だった。何か再会した喜びを確認し合ってから、


「あ、ちょっと待って今O君に連絡するから」


と言って、ツイッター上のDMで『K君と会えたよ!』と送る。そこで私は一つ思いついた事があった。それはK君との連絡が取り易いようにする工夫だった。


「ツイッターとかってやってる?」


「え…?ツイッター?ずっと前にアカウント作ったままかなぁ…」


O君と私が連絡しているようにツイッター上でやり取りをした方が何かと便利だと思ったのである。けれどコンビニの一角で立ち尽くしたままで口頭で説明するのは無理があると思い、とりあえず彼のジュースの会計を見守った。



コンビニを出て、一体何を話していただろう。近況を確かめ合うような、何か普通の世間話のような。色々あり過ぎると何から話したらいいのか分らないのかも知れない。そこで意外にも例のスマホのゲームの話題になったのは面白かった。K君もやりはじめたらしくレベルも私と同じようなもので、その辺を歩いてアイテムを補充したりした。そんな事をしていると、何か久々に会ったという感じがしないのも不思議だった。
スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

二人の管理人

Author:二人の管理人
ブログには珍しく二人の管理人で更新してゆくブログです。

二本松のこと、競馬のこと、これから手探りで何かを
やってゆこうと思っています。




最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ただのカウンター
フリーエリア
投票
google+
プロフィール
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR