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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

フレミングに宛てて ④

小林さんの家、鈴木さん宅を訪れた日の後日、バイト終わりで時間ができたから小林さんの仕事ぶりを確かめてみたくなりネットのイラスト投稿サイトで「虹野スミレ」と窓に打って検索しました。見事にヒットが一件だけあり、紹介文からも間違いなく本人のアカウントであることを確認しました。あの時の発言通り彼女の書いた絵の中には挿絵などで使われたものが上げられていたり、仕事を募る意味で描かれた丁寧なイラストが印象的でした。僕はそれまでネットでしか『絵師』というものを知らなかったし、特に意識せず自分が良いと思ったものに星を付けてゆくような事しかしていませんでしたが、小林さんという例を知り、やはり人が一生懸命仕上げたものに対しての尊敬とか、ありがたさのようなものが芽生えているような気がしました。



短い時間でしたがそういう出会いがあっただけでも、石に躓いた事がむしろ良かったと思える精神状態の自分もどうかと思いますが、こういう事なら歓迎する気持ちになりました。ところが話はこれだけに終らなかったのです。



週の半ばといったその日音沙汰になっていた友人からメールが届きました。『やっと時間できた』というメールから何通かやり取りがあって、


『久しぶりにまたカラオケでも行かない?』



という流れになったので賛成しました。そもそも友人と疎遠になりかけていたのは友人がK市に勤めていて仕事に忙殺されているからだとは分っていたのですが、友人の方でも息抜きに昔からよく行っていた地元のカラオケ店で目一杯歌いたくなったとの事でした。僕もカラオケは好きなのですが一人で行ったとしてもテンションが上がらないのでご無沙汰で、自分としても丁度良いなと思いました。



週末。土曜日の昼からでしたが、友人と車でバイパス沿いのカラオケ店へ。入店しながら友人が、


「今日フリータイムとかでいいでしょ?」


と訊くので「そうだね」と答えました。そう答えて丁度フロントの店員を見た時でした。僕は一瞬自分の目を疑いました。それは店員の方も同じだったようです。


「小林さん!?」


「あ…えっと、」


この前会ったばかりですから相手もこちらの顔をしっかり覚えているようですがその様子から察するにどうやら名前は覚えていなかった模様です。


「鈴木です。あの時の鈴木翔です!」


助け船を出すと、


「はい!いらっしゃいませ。びっくりしました!」


と少し嬉しそうな笑顔で迎えてくれた。友人は「なんだ知り合いか?」と不思議そうでしたが「あとで説明するよ」と言ってその場はとりあえず受付けを済ませようと思いました。かなり慣れた様子で接客をしてくれる小林さん。


「本日お時間はいかがいたしましょうか?」


「フリータイムでお願いします」



なんとなく敬語になってしまいましたが、昼過ぎで部屋も開いていたらしくスムースに入室できました。


「ごゆっくりどうぞ!」


という声を背後に聞いて禁煙の部屋へ。入室して準備をしながら小林さんについて友人に経緯を説明すると「ふーん」と頷きながら興味深そうな様子。


「そんな事があったんだ。なんかお前らしいと言えばお前らしいよな」


「どういう意味で?」


感想は何となく釈然とはしませんがしっかり理解してくれた様子。ところでそれはそうと僕はここである事実に気付いてしまいました。


「やべーな。小林さんに歌声聞かれちゃうなぁ…」



その部屋は運悪くというのか、勿論部屋自体は良いのですがフロントからほど近い部屋でおそらく歌声が響いてくるところにあったのです。数曲歌っているうちにどうでも良くなってきたのですが、ドリンクバーでジュースを補充しに行く際にも小林さんと時々目が合ってそこでもほほ笑みかけられるので何ともむず痒い気持ちでした。



結局その日は4時間程歌い続けてへとへとになったところで退室することに決めました。前はもっと長く歌えたと思いますが歌ってないからか声が掠れるのが早くてそれは友人も同じだったよう。歌うのに夢中で部屋でそれほど話をしていたわけではありませんが、お互い十分に近況を確認し合ったような気がしました。元気にやれているんだなという事が分りましたし。



会計の際、また小林さんが担当してくれたので僕は思い出して一言、


「あの、ネットで絵見ましたよ!本当に上手ですね!」


と彼女に伝えました。すると一瞬「え?」という表情になったもののすぐに理解したようです。


「本当ですか!嬉しいです」


そんな風に言って本当に嬉しそうでした。僕としてはこういう偶然があるものなのだなと感動する反面少し冷静に、


<そういえばこの辺でバイトって確かに限られるからな…>


と現実的な事を考えてしまいました。ただ小林さんのやりたい事を実現するには家からも近い場所にカラオケ店ですし良い選択だと思いました。友人に家に送ってもらう帰路で、


「結構可愛い人だったな。この辺の人っていう顔じゃないからかも知れないけど」


と彼が小林さんについて言いました。確かにそれは言えているかも知れません。前も感じた事ですがやはりこの辺りに住んでいる人との決定的な違いは「言葉」です。接客の際には丁寧語になるようですがそれも相俟ってアクセントがしっかりしているだけにどこか背筋がピンとしてくるように感じました。自宅で友人と別れ、お互いに「またな」と一言。これからは相手の仕事の事を考えながらお盆頃には連絡をした方がいいだろうなと思ったり。



その日はもう体力的には既に疲れていたのですが、縁があるようなので折角なので「虹野スミレ」さんの絵をもう少ししっかり見てみようと思いPCの前に長時間座っていました。そこで流石に目も疲れてきたので早めに休もうと思い夕食を食べてからはすぐに自室に籠りました。



そしてスマホを弄りながら、いつかのようにウトウトしてきたところでした。またしても思わぬ展開です。菅野くんから突然こんなメールが届きました。


『鈴木さん、相談に乗ってもらいたい事があります。少し時間を割いていただく事って出来ますかね?』


これを受け取って悩まなかったといえば嘘になります。けれど既に菅野くんの事情もよく分かっている以上無碍には断れず、


『分りました。僕の時間がある日で良かったら』


と返信していました。
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