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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

ある未来の話

特徴があるかどうかで言えばないのかも知れない。どっちつかずが多くて時々八方美人にも見えたりするかも知れないとちょっと気にしたりする。でも本当はただ普通過ぎて面白味のない性格なのだと次第に分りはじめている。グループでやり取りしていても特に話題がない事にコンプレックスを感じ始めていて、ちょっと無理をしてキャラを立ててみようと思ったりするけれど空回りしている空気を感じる。


この間、こんな事があった。グループの中心の花恋という子が最近はまったというバンドの曲を進められて何曲か聴いてみたけれど自分はあんまり良いと思えなくて、少しは音楽は詳しい方だと思っていたからこっちの方が良いよと好きなアーティストのネットの動画をその子に見せたら、


「ああ私もそれ好きだよ、でもそのバンドだったら初期の頃の方が好きかな」


という反応で実を言うとそのバンドの初期の頃の曲は聴いたことがなかったからその時はあいまいに、


「ああ、確かにね」


と頷く事しか出来なかった。その日家に帰ってから初期の曲も聴いてみたけれど、私には構成が複雑すぎて心地よく感じられなかった。でも普通の人の感覚だと今の曲の方が人気があるし評価も高かった。それで良いような気もするし良くないような気もする。念のため弟にも訊いてみたら、


「ねーちゃんは感性が普通だからね」


と言われた。中学2年で音楽に目覚めたとかで時々ギターの練習をしている音が部屋から聞こえるけど、多分弟は「感性」という言葉の意味もよく分かっていないと思う。もともとは母親が口癖のように私の感性が普通だと言い始めたところから来ていると思う。



住んでいるのが田舎だという事もあるけれど、人並みに都会に憧れがあって大学に進学するとしたら漠然と関東方面で一人暮らしとかになるのかなとか想像したりする普通の高校生。進学校といえば進学校だけど、そこまで偏差値も高くない高校で、そこでの成績もやや上位というくらい。県内だったらそこそこ良いのかも知れないけど全国で比べたら本当に平均という感じ。唯一の特技は記憶力が良い事。記憶力といっても勉強には活かせなくて、単純に毎日あった出来事をよく覚えているという事。父が眠る前に変なところにリモコンを置いたのを見ていて、翌日の朝「リモコン何処だ?」と慌てていたところで私が普通に手渡したりすると「さすがよく覚えてるな!」と感心されたりする。ちなみにこれまでそういう事が7回はあった。一週間前の昼に食べたものも覚えているというのは特技と言って良いかもしれない。



もちろんその記憶力の良さも実際は良い事ばかりではない。コンプレックスを感じるようになったのも、過去の失敗をいつまでも覚えているからだし誰かに過去にあった事を指摘すると、


「一々細かい事覚えてなくていいから」


と倦厭されがち。それを言ったのはグループの中でも仲がいい美鈴で遠慮がないからこその指摘だったとは思うけど地味にショックだった。



ここまで話せば私がいかにも今の生活に不満を持っているという感じにも思われそうだけれど、本当のところは友達にも恵まれてるし、ちょっと大げさに述べ立てただけのちょっとした愚痴のようなもので、至って平凡なこの高校生活を私は好ましく思っていた。



でもそんな生活からほんの少し踏み込んでしまっただけで私は迷いこんでしまったのだ。その普通ではない世界に。




★★★★




「え?告白!?」


「しぃー!!声が大きいよ」


私が思わず出してしまった少し大きな声に反応して花恋は後ろを振り返りクラスの様子を確認してから私に注意した。花恋は小声で話していたけれど内容に吃驚してしまったのだ。私は小声で、


「本当に告白するの、学くんに…」


「うん。そのつもり」


花恋は頷く。「学くん」とはクラスで一番成績の良い子で大人びているから好印象なのだけれど、私からすれば落ち着き過ぎで「堅物」という感じしかしない。顔もこれといった印象がなくて塩顔という分類だけど、ちょっとのっぺりし過ぎていて少し不気味だった。まあ私も過去に好きになったのもちょっと変わった人だったし、好きになるのは理想的な人というわけではないと思うけれど、クラスでも一番華やかで男子からも人気があると噂される花恋がよりによって「学くん」のような人に惹かれるというのはやっぱり意外だった。そしてもう一つ意外だったのは、グループの中で私にそれを最初に相談した事だ。


「私に相談されても…学くんの事知らないけど…」


「うん。そうだと思うんだけど、私も告白っていうか気になっててちょっと話すきっかけを作ってもらえないかなって思って」


「自分からアプローチすればいいじゃん…」


若干理不尽な感じもしたのだけれど、花恋の性格から言って同じクラスというだけで全く接点がない「学くん」と自然に仲良くなるには基本的に分け隔てなく接する私が先鞭をつけるのが良いという理由で押し切られて「学くん」に接触する事になった。



その日の放課後、帰宅部の私はいつもならそのまま帰るところだったのだけれど少し教室に残り頃合いを見計らって部室棟のある部室の方に歩いて行った。ドアの上には『地域文化研究部』といういかにも堅苦しい名前のプレートが掛かっていた。心なしかその周辺の空気が澱んでいて妙に静かな気がした。


「失礼しまーす…」


意を決してドアをノックしてみると中から「どうぞ」という男の人の声が聞こえた。扉を開けそのまま中に入る。部室の中は何というか多分だけど資料の紙と書籍がまあまああるという感じという以外はごく普通で、化学準備室くらいの大きさの空間に男子が2人だけ静かに椅子に座っていた。違和感があるとすれば窓がカーテンで閉ざされたままになっているという事だろうか。


「なにかご用ですか?」


男子の一人が私を見て声を掛けた。その人は分厚い本を膝に置きながら読んでいたらしく、姿勢はそのままで顔だけこちらに向けていた。メガネは掛けているけれど顔は結構整っている。知らない人だ。


「えっと、同じクラスの土岐田学くんに用事がありまして」


「だってさ、学」


その人はその正面に座っていた学くんの方を見て言った。同じように椅子に座っていた学くんだけれど一つ気になったのは本当にただじっと座っていただけだという事。普通なら何かを読んで研究していると思うのだけれど。


「あれ?たしかクラスの…三浦…」


「優子です。三浦優子」



どうやら覚えられていたらしい。


「ああ、そうだった。で何か?」


学くんの感じが気兼ねなくという様子だったのでクラスの物静かな感じの印象とは違って意外と話し易い感じの人だなと思った。ただ「何か?」と急に振られてもここで話する内容ではないと思った。


「ちょっと廊下に出てもらっていいかな?」


上目遣いを意識して頼み込むような感じで言った。


「ほぅ、学は結構モテるんだな…」


学くんの向かいの人が茶化してきたけれど気にしないようにする。


「あ、ごめん今ちょっと席を外せないんだよ」


「へ?」


学くんの返事で変な声が出てしまう。明らかに席を外せないようには見えない。ちょっと考えて、もしかしたら断りたいからこんな事を言うのかなと思ったら妙にイライラしてきて、


「何それ、それはちょっと失礼過ぎない?」


と思わず声を上げてしまった。だけど二人とも驚いた様子はない。その雰囲気に堪えられなくなったのもあるけれど私は勢いで奥の方に歩いて行ってまだ座ったままの学くんの手を掴もうとした。



手首のところに手が触れた瞬間、私の身にとんでもない事が起った。


「え…?何…これ?」


私はその時異常なイメージを幻視した。起きているのに夢を見ているような、妙にリアリティーのあるイメージ。しかもそれは『一つ』ではなかった。咄嗟に直観したのは、それは幾つかの違う『未来』のイメージだった。それは強烈で、しかもそれが同時に襲ってくるので私は混乱し、気付いた時には学くんの隣にへたり込んでしまっていた。その時学くんの手を放すとイメージはまるで何事もなかったように消え去ってしまった。


「え…もしかして君…いま何か見たの!?」


学くんは衝撃を受けたように私を凝視し、こんな事を言った。私は一瞬でへとへとになってしまっていたからぼんやり頷いただけだったけど、もう一人の人が「そんな事があり得るのか…」と何かを了解しているように唖然としていた。


「あのさ…」


学くんは恐る恐る訊ねる。


「もしかして、自分が何を見たか分っちゃってる感じ?」


「うん…なんとなく…」


私は自分が見たものが信じられなかったけれど、仮に学くんがそれが何かを知っているとするなら学くんもそれを見ていたのだと思う。簡単に言ってしまえばそれは…


「…。説明した方がいいかもしれないね。今のは想像通り未来の『可能性』だよ。それは人間が想像するような未来の可能性ではなくて、実際に起り得る可能性の高いものがはっきり見えて、そうでないものが薄く見えるんだ」



「うん…そんな感じだった。私…とんでもないものを見ちゃった…」



それは一言では説明出来ないけれど、敢えて言葉で説明するとすれば人間同士が憎しみ合い争い合う少し先の未来の光景だ。ただそれははっきりとではなく、むしろはっきり見えたのは今と大して変わらない平凡な日常の光景。そしてもっともっと薄い光景で誰もが満たされているような理想的な世界のイメージが見えた。他にも色々な度合いで様々な未来の光景が見えたけれど、とんでもないと感じるのはこの両極端なものだった。


「僕が視ようとしたものが視えてしまった、と説明するしかないね。こんな事があるという例は聞いたことがないけれど、まあそれを受け入れるとして、もう少し説明するとすれば僕はある時点のそういう未来の可能性を見ることが出来る。遥か未来からかなり近い未来まで。君…優子さんが視たのは今から100年後の未来の可能性だよ」


「そ…そんな事が…」


話は信じることは出来ないのだけれど、イメージの生々しさは心が既に受け入れていた。でも私はそこで考え始める。


<仮にそんな事が可能だとすれば…>


可能だとすれば…そこからは様々な事が考えられた。能力を悪用すればどんな事でもできそうに思えた。そう考えた瞬間私は背筋がぞーっとして、知らず知らずに震え始めてしまった。学くんは、この目の前に居る人たちは信用できるのか…その様子を見ていたらしいもう一人の人は私に優しく語りかける。


「あ…あのさ俺には学みたいな能力はないし君のように見えたりはしないんだけどさ、実際その能力って何かが出来るようでほとんど何も出来ないんだ。だからまあ…心配しなくてもいいよ」



その言葉を信用するならば多分そういうことなのだろう。ただその時の私は色々限界だったので、


「ごめん…ちょっと私今日は家に帰る事にする…その話はまた後で」


と部屋を後にした。
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