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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

フレミングに宛てて ②

何かがある方が珍しいこの地元での生活ですが、あの珍事(?)以降また歩道に大きな石が落ちてやしないかと時々目を配るようになりました。もちろんそんな事があっては困るのですが、僕としてはそれほど困らない事であれば何かの切っ掛けになると思って歓迎する気分ですらありました。


けれど、考えてみれば起り得る事ならば起こり得るのだなという事は失念していたかも知れません。数日後の夜、ジージーと蝉のような音を出して大胆にスマホが震えはじめました。更けていた頃だったのでウトウトした気持ちが一気に引き戻され、慌ててそれを取り上げました。大方バイト関連の電話だと思っていたのでそれが見慣れない表示だった時には一瞬緊張が走ったと思います。


「はい…もしもし」


『あ…俺ですけど…って言っても分かるかな?』


「あ、はい。この前の人ですよね。確か菅野さん…?」


『あ、そうっす。そちらは鈴木さんで良いんですよね?』


「ええ。そうですよ。で、何かありましたか?」


『あの、こんな事頼むのも変なんですけど、明日またあの公園の所に来てくれませんか?』


「え…?また何かしたの!?」


僕はまた同じことをやらかしたのかと思って強い口調で問うていました。すると相手は、


『い、いや全然そういう事ではないんですけど。ちょっと手伝ってもらいたい事があるんです。友達の雅仁に関係する事で、そっちの地理に詳しい地元の人の助けがちょっと必要で…』


と言いはじめました。


「何か分ったの?まあ明日は時間あるから手伝ってもいいんだけど」


菅野くんの言葉からは切実な様子が滲み出ていたので断り難かったのです。何をするかは分らないけれど悪い事では無さそうだとその時は思いました。


『え、本当にいいんすか?手伝ってもらえるなら本当に嬉しいです』


彼はもう一度確認するように言いました。


「うん。何時に行けばいいの?」


『えっと、K市から車で行くんで9時ころに公園に着くと思います』


「分った」


「じゃあ、よろしくお願いします!」


そこで電話が切れました。次の日は特にする事がなかったのは確かです。多分何もなければネットを見ながらダラダラと過ごしているだけだろうと思いましたので、やはり何かの切っ掛けだと思って手伝う事にしたともいえましょうか。とにかくその日はそのまま眠りました。



朝目覚めたのは8時頃でした。自宅から公園までは僅かな距離なので、適当に朝食を採って準備をすると程よい時間になったので家を出ます。念のためですが、やはり下を向いて歩いていました。何事もなく公園に到着すると流石にこの時間なので広い公園には誰もいません。中に入ってなるべく周りから目立つ位置に立って通り過ぎる車を一台一台見つめていました。9時を少し過ぎた頃でしょうか、丁度それらしい軽自動車がややぎこちない徐行をするような運転で横の道からこちらの方に曲がってきたのが見えました。案の定、車は公園の入口付近に停車しました。


「あ、お待たせしました!」


その車から降りてきた菅野健くんは僕の存在に気付いていたようです。軽く走るようにこちらの方に向かってきてその時の格好は夏らしい軽装で、僕はその時、そろそろ下も短いのにした方が良いのかなというような事を考えていました。


「今日は車で移動するの?」


「はい。で、行先がちょっとどこなのか分らないので、この写真を見て下さい」


彼はスマホを操作して幾つかの写真をフリックしながら僕に見せました。それは風景や人物が映った色々な写真でその中の若い男性を指さして「これが雅仁です」と補足します。


「うん。確かにどこかで見た事のある場所だね。でも僕もすぐには分からないかな…」


「そうなんですよ。これ、雅仁のツイッターに残ってるここ等へんの写真で、最初に観たときは気にしなかったんですけど、もしかしたら雅仁が俺の知らない人と会ってて、その人が雅仁の行く先を知ってるかも知れないって思ったんです」


「おお…なんか探偵みたいになってきたね」


それは僕の素直な感想でした。話を聞いていると別に変な事ではないし、探偵のような事ならばと少し心が躍っているのを感じました。


「地元の人って言っても雅仁の親にはなかなか頼めないですし、そうなると知ってる人が根本さんだけだったので…大丈夫でしたよね」


かなり丁寧に確認する菅野くん。確かに自分が悪戯をした相手に頼むのはかなりハードルが高いけれど、それを気にしてしまうとそもそももっと色んな事を気にしなければならなそうだったのであまり考えないようにしました。


「大丈夫ですよ。なんか一応その写真に心当たりがあるんだよ」


「え…?ほんとっすか?」


「多分ね」


そのまま僕は菅野くんの車に乗車しました。写真に映っていたのはこの付近ではなく少しばかり離れたところだと大雑把に目星をつけていました。「多分大きくは外れてないと思うよ」と告げると菅野くんはちょっと安心したようでした。ナビをしながら移動して10分程、ある写真に背景として写っている地元の人が見慣れている大きな山が見渡せる拓けた場所にやってきました。位置関係からいうと、この山がはっきり映る場所はここかもう一つの場所だと思われたのです。


「ああ、なんかそれっぽいですね。電車で通り過ぎてた時に、田んぼばっかりだなぁって思ってたんです」


「ここは市内からはちょっと離れてるしね。僕もそんなには知らないんだけど昔、中学校の頃に友達と『自転車でどこまで行けるか』みたいなことやってて、こっちにも来たんだよ」



「へぇ~いいなぁ。そういうの」


それは地元を出て行ってしまった人で最近連絡を取り辛くなっているという友達でした。僕よりも遥かに優秀な人でしたが、何故か僕と一緒に馬鹿をやってくれたものです。少し思い出に浸りつつ、写真の場所の探索を再開。大雑把にこの辺りだと分ってはいるのですが、具体的にどの「家」かというのはこれから探すしかありません。


「これどこの家なんでしょうね?似たような家が多いから…」


車は丁度田んぼの真ん中の道路を走っていたのですが、僕は自然と庭がはっきりと山が映っているような方面に出ているような家だろうと推測しました。ただ、その条件を満たす家が意外に多くて、手当たり次第に探さなないといけないかなと思いました。


「あ、これよく見ると学校が映ってないですね。あそこの学校」


菅野くんが何かを発見したようです。言われて見てみると、この位置から見えるところに小学校があるのですが、写真がこちらの方に向かって向けられたものだとするなら、田んぼの両サイドの市内の方なのか向こう側の方なのかでいえば、市内の方の側の家だという事がそこから分かります。学校が映り込んでいないということから分ったのです。


「おお、名探偵!」


ちょっとふざけて言ってみると、


「いや、そんな…」


とにやついて照れ臭そうでした。会ったばかりの人ですが、意外と気の合う人のような気さえします。車は市内の方の側の道路に寄ってまっすぐ走り出します。そして暫くして、いかにも写真にあったようなそれらしい斜面を持つある家の前に停まりました。斜面の道がある写真が一つあったのです。



「ここっぽいですね…」


「そうだね」


車を道路を適当なところに停めてそこから再びその家の前にやってきましたが、そこだと分っていてもさすがに知らない人の家を訪問するのは勇気がいるものです。けれど「ふぅ」と意を決して菅野くんは斜面の道を登ってゆきます。僕はそれを見守るように少し離れて着いてゆきます。家の呼び鈴を鳴らしてから、


「すいませ~ん」


と言ったようですがなかなか反応がありませんでした。留守なのかも知れないと思って、一度こちらを振り向いた菅野くんでしたが次の瞬間ドアが横に開いて、意外な人が顔を出しました。


「はい?何か?」


それは同じくらいだと思われる年齢の女性でした。髪は短めでやや目つきが怖いというのか、何か不審に思って睨んでいるようにも思えました。



「あ、すいません。あの、この写真の場所を探して来たんですけど、高橋雅仁って人を知りませんか?」


と言って写真を見せる菅野くん。


「え?誰ですかそれ?写真?」


話を聞いて警戒が少し緩んだのか、気前よくスマホを受け取って「えーと」などと言いながら写真を見ているようです。


「あー…この人高橋さんっていう名前だったんだ。へぇ~」


どうやら見覚えがあるよう。


「やっぱりここに来てましたか!?」


菅野くんが少し慌てて言った声だったので女性は一瞬驚いたものの、


「あの、立ち話もなんですから上がっていきますか?そちらの人も」


と提案してくれました。詳しい話が聞けるようだったので、お言葉に甘えて僕もお邪魔する事にしました。
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二本松のこと、競馬のこと、これから手探りで何かを
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