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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

麗しき人の夢 ①

意外や意外。あるところにはあるんだなと感心した。地元の数少ない古書店のようなリサイクルショップのような外壁の緑が鮮やかな店で、「無い」と思っていた本を見つけた。厳密には何処にも「無い」というわけではなく、ネットで『密林』を利用すれば高い配送料を払って何とか手に入れる事も出来ると思われる品なのだが、それを地元で見つけられる可能性は限りなくゼロに近いと思っていた。


『へぇ~良かったね』


ネットで呟いたらフォロワ―の友人からリプライが来た。彼も本が好きなのだが、多分自分が欲しいと思っていたこの本に食指は動かないだろうと思われる。


『麗しき人の夢』



それが本のタイトルだ。小説にありがちなタイトルなのだが、実は小説ではない。エッセーである。詳しくは読んでみなければわからないが本の「そで」の部分にある解説では、


『夢と現が交差するような時間をテーマに』


という文句が入っていて、かなり独特の随筆であるという事が予想される。ネットのレビューでも過去作からのファンが手放しで褒め称えていて、「読んでいて夢をみているような気分になった」というのは著者の狙い通りなのではないだろうか。手に入れた日こそ時間が無くて読めなかったが、数日後の土曜日は朝から読み耽っていた。



『世の中の現象というのは私にとっては早足で過ぎてゆくように思われる。それに着いてゆくように生きてゆくけれど、何処かに置き忘れた何かが凝ったまま時折足を引き留める。自分の中のもっと「のんびりやろうや」と訴えかけているものだったり、過去のある時点で止まってしまったような気持ちとか、そういう色んなものがある事に気付かされるけれど、得てしてそれは夢の中で妙なリアリティーを持って再現される事がある。夢の世界から脱け出した後もしばらく続くいつもと違うテンポとリズムで普段とは違った言葉が浮かんでくる。


それがこの世の理と合致している事はあまりないのだけれど、時々、例えば景色を見ながら道を歩いていて何気なく足を停めてしまうような時に、ふとそれがそこに再現されているような気持ちになる。そういう事を『夢と現の交差』と呼ぶならば、私はそういう瞬間を探すのが好きなのである。


多分それは、早足とは違うスピードで動いていたり留まっているもの、そこだけ時間の流れが違うようなそんなものなのだろうと思う。』



という書きだして始まった文章は何かしら身に迫るものがある。おそらく自分もそれに近い事を感じていて、こんな著者のリズムで過ごしてみたいと思っているからだろうと思う。一方で、『作家』という地位にあるからそういう事も出来るのだろうと羨望にも似た何かが擡げそうになる。本好きの人間にありがちな安易な作家生活の想像から来る憧れと、少し書いてみてそこには届きそうにないという気持ちの狭間で、可能な限りそこに近づいてみたいと思いはじめて手を出してみたエッセーというジャンル。けれど、今ではそういうものを読んでいると心が落ち着く感じがする。



時間の感覚を忘れるように読んで行って最初の章に入る。『朝の光』というその賞は、まさしく朝、寝起きでぼんやりしている時にテレビで溌剌と原稿を読んでいるニュースキャスターの声や動作が異様に早く感じられるという光景について語ったもので、丁度起きる直前に観た夢が穏やかなものであった事から、


「世の中のスピードというのは『仕事』が一つの基準であることは間違いない。けれど『仕事』にも色々なリズムはあって、飛び交うニュースをまとめてなるべく早く簡潔に発表しなければならない使命を帯びているキャスターを標準としてしまうと、案外早すぎるのではないかと思われる。けれど『世の中』を広く見通すなら、刻々と変化が訪れていて、そのスピードでも遅いのかも知れない。


(略)


私はといえば、無意識に穏やかな世界…とまではいかなくとも空間がどこかに無いものかと夢の続きを探してしまっている」


と誰もが経験するような寝起きの様をそのまま語っている。そこで著者は庭に出てみる。『朝の光』が絶え間なく当たっている静かな朝がそこには広がっていて、


「意外に身近なところにあった」


と結論づけていた。本を読むときにはなるべく一気に読んでしまう私だが、むしろこの本は自分でもそう実感できる事の方が大事なのではないかと思えてきて、同じように庭に出てみた。早朝ではないけれどまだ十分『朝の光』が辺りを包んでいる。土曜日だし、田舎だから一層静かな世界のような感じがする。遠くにはいつも見守ってくれている大きな山の輪郭がしっかりと見える。4月だが、雪化粧はそのままに、何ともスケールが大きい世界の一部である。こういう状態のまま、本当に何千年、下手したら何万年と大きくは変わらなかったのだと思うと、まさに「早さの違い」というのを実感する。



201604050819161b3.jpeg





<確かに身近な所にある。けれど流石にそれはのんびり過ぎるだろうか…>



などと思ってしまった。
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