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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

寒空のアイス

冬場にアイスが食べたくなることは稀によくある。コンビニで買うバーのアイスも良いし、ミニストップで試しに買ったフォンダンショコラならなおよし。でも専門店があればそちらに引き寄せられるに違いない。


男子でスイーツを好むのはおかしい事だろうか?俺自身否定し切れない部分がある。比較的硬派な校風の高校に通っているだけに何となく声を大にしては言えない内容だ。けれど、もし同級生が最近地元に出来たアイス屋に通いさえすれば別な理由で常連になるような気がする。俺も恥ずかしながら、あの笑顔を見た瞬間からまたそれを見たいと思ってしまっている。


「ふぅ…」


俺は店の前で一旦深呼吸をした。寒い日だったのでどうやら店の中には店員以外居ないらしい。好都合と言えば好都合である。意を決して自動ドアの前に立ち入店する。


「いらっしゃいませ」


すると澄んだ明るい声がカウンターの方からやって来た。少しばかり年上の「お姉さん」という表現がぴったり似合いそうな透き通るような白い肌の店員さん。…と同じくらいの年の男。少し遅れて、


「いらっしゃいませ~」


とどことなくやる気が感じられない声が長ったらしく響く。


「あ、どうも」


多分、常連だと思われているだろうからなるべく愛想よく挨拶してみる。すると女性の店員がほほ笑みかけてくれる。いつものことながら俺はその笑顔でドギマギしてしまう。お分かりのように俺はこの笑顔を見てこの店が気に入ってしまったのである。思春期まっただ中の高校生にとってこういうのは正直たまらない。進学校の勉強が出来て口も達者なクラスの女子にはこういう嫋やかさは望めないだろうし、もともと年上に憧れがあっただけに今の俺にとっては理想の女性像がこの店員さんである。ネームプレートで既に確認している事だがこの人は、


『風吹』


という苗字らしい。ネットで検索して「ふぶき」と読む事は分っているのだが、やはり下の名前が気になる。我知らず風吹さんばかりを見つめていたからなのか男の店員が


「ご注文は何にします?」


と少し早口で急かして来た。「ちっ」と舌打ちしそうになるが堪える。アイスもしっかり目的なので冷凍ケースを一通り眺めて、


「じゃあ、ダブルで「チョコミント」と「オレンジ」を」


と言った。「チョコミント」は好き嫌いがあるようだが、俺はここのチョコミントを食べてチョコミントの常識が崩れ去って好物になった。そこに「オレンジ」を組み合わせるのも独特かも知れないが、違う味を楽しんだ方が良い。代金を男の店員に手渡す。



運が良い事にアイスをカップに掬ってくれているのは風吹さんだった。慣れた手付きを見ているとなんだがうっとりしてきてしまう。長い髪を後ろで一つに束ね、店の帽子を被っているけれどケース越しに見える横顔が美人のそれなので思わず凝視しそうになる。


<こういう時になんか気の利いたことを言えればなぁ…>



さすがに積極的に声を掛けるなんてことは出来ない。そんな意気地なしの自分に「はぁ~」と小さく溜息をついて壁の方を見る。するとそこには思わぬものが貼ってあった。


「時給、850円…夕方から…!?」


それはバイト募集の張り紙だった。そういえばこの店ではこの二人以外に見た事がない。もしかすると出来たばかりで人が居ないのかも知れない。まてよ…


「あの、バイトって今募集してるんですか?」


咄嗟にそう訊いていた俺。これならとても自然に会話が出来るのだ。すると、何というか期待外れで男の店員『丹野』が、


「え、はい。募集してますよ。夕方からのシフトですけど」


とやたら喰い付きがよく応対する。


「もしかして、店員さんってあんまり居ないんですか?」


バイトなどした事がないし、その辺の事情を知らないので聞いてみた。その時、丁度アイスを盛り付け終った風吹さんが、


「お待たせしました。はい、どうぞ」


と完成したものを手渡してくれた。盛り方も美しかったが、手渡ししてくれる際に一瞬だけ手が触れたようで、ドキッとしてしまった。ちょっとだけひんやりとしていたけれど、それも良かった。


「あ、どうも」


「店員はこの時間だと私達しかいないんです。少ないと言えば少ないですね。だからもしアルバイトに興味があるのでしたら店長も歓迎すると思いますよ」


風吹さんはそう言ってにっこりと笑いかけてくれる。正直言ってとても魅力的なアルバイトだった。何より自分が好きなアイスのバイトというのも良い。夕方なら学校が終わってから出来るかも知れない。それに…



俺はアイスのカップを手に持ったまま風吹さんをじっと見つめた。


「…いや…でもな…」


いくら思春期とはいえ流石にそういう不純な気持ちを抱いてはいけないような気がした。それに何だか丹野さんがだんだんこちらを睨みつけているようにも見えてきたし。


「ちょっと考えてみますね。それじゃあ」


ここは家でじっくり考えてみる事にした。


「「ありがとうございます」」


店を出たあとすぐアイスを一口。うん、やはりチョコミントは上手い。すると、店の中にいる丹野さんの声で、


「ユキコさん、〇×※△…」


という声が聞こえた。もしかして風吹さんの名前は「ユキコ」さんと言うのだろうか?


「ユキコって、漢字でどう書くんだろう?」


何てことを考えながら寒い冬空でアイスを頬張りながら歩いていた。
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