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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

今日の空気

捉えどころのない揺らめきである。前と言えば前、変わっていないと言えば変わっていない。ただ浸れるもののない現在だけが浮き上がっている。過去に今と同じものは無いから、それを色づけるものがないから、今だけが静かに揺れ動いている。





今日の空気は何色だろう?などという愚かな事を考えそうになった。冷たい空気は何となく白か青に思えるけれどもうその考えがつまらない。つまらないけれど何も考えないよりはマシなのかも知れない。身の凍りそうな雪国の冬。雪はないけれど、外気に当たって作業するのはけっして楽ではない。何となく全てがぎこちない。もちろん関節は確かに堅い気がするけれど、思考さえも途絶えがちで、だからか無言の時間が増える。


「さむいねぇ…」


誰かがそう言った。等しく体温を奪ってゆく僅かな微風が吹いたところだ。その痛みを伴うような冷たさを共有している。それは間違いない。



だからどうしたのだろう。ふとそんな風に考えそうになった。共有しているとはいえこの冷たさは自分だけのもので、誰も代わる事ができない。そして同じように。


我々は同じく険しい道を、平等に歩んでゆく。


「そんな標語が一体何になるというのだろう」そうはね付けたくなる程に虚しい達観である。たとえそれが事実であるとしても、今こうやって精一杯やっている事は何かにはなっている筈である。


「そういえば奥さんと仲直りできましたか?」


ふとその人が以前話していた事を思い出して深く考えず口に出してみた。その人は苦笑いなのか本当にほほ笑んでいるのか分らない表情で、


「まあ、なんとかね」


と言った。今はそれだけで十分なような気がした。すると彼はまた、


「それにしても今日は一段とさむいねぇ」


と言った。つられるように「さむいですね」と呟くとそれが切っ掛けになったのか各々作業に集中し始める。寒い事は分りきっている。ならばさっさと終わらせようというニュアンスになったようである。




精を出したお陰で作業は1時間ほどで片付いた。自分のシフトが丁度そこまでだったのでタイムカードを押す事にした。そのまま外に出てすぐのところに設置してある自販機の前で何となくスマホを弄っていた。


「やあ、終ったね」


さっきの人が着替えて外に出てくるところだった。


「結構早く終わりましたよね」


「うん。よし、じゃあ今日こそは謝ってこようかな…」


「え…?謝るって…あっ」


それが「奥さんに」謝るという意味だという事に気付いた時、自然と「ふふ」という笑い声が出ていた。


「今日は寒いので、何か温かいものをプレゼントしたらいいんじゃないですかね?」


「ん?ああ、それもいいかもな。ありがと」



そう言うとその人は何となく嬉しそうに帰った。それを見送っているうちに「今日の空気の色がどんな色であれ、それはそう悪いものではない」とまた愚かな事を思ったりした。
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