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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

特別な世迷いごと

今日も今日で特に変わった事はない。世界は相変わらず僕を置いてけぼりにしようとしているようにも思えるし、肝心な所で僕の方が先走ってしまっていたり。仕事が一段落するまでは気の抜けない日々だから、いつの間にか身に着けていた処世術を駆使して何とか乗り切ろうとしている。週末にはきちんと予定もあるから別にど平日の今日に何かを期待するのが間違っているのかも知れない。


「でもなぁ…」


その溜息にも似た呟きは誰の耳にも留まる事はない。手弁当の昼食を食べながらスマホでニュースをチェックしていると、世間はドラフト会議や大企業の不祥事に熱狂しているように思えた。年一回のドラフトはともかく信頼を損なうような事件は日常茶飯事だから特別という感じもしない。予定調和ではないけれど、予期された範疇の出来事の中で物事が進行しているという錯覚を抱きそうになる。大きな話には人並みに関心があるけれど、本当は心のどこかで今日のような日こそ自分にとって特別な日であって欲しいと願っているのだろう。


「ちぇ…」


そんな事をしているうちにも休憩時間は確実に減っていて、ちらっと確認した時計に文句を言いたくなるけれどネットを見続けたとしても自分にとって有益であるかどうかは分からなくなりそうなので、切り上げるには丁度良いのかも知れない。


「田中さん!あれ見ました?」


この流れをぶった切るかのようにマイペースな後輩が話を振ってくる。彼はやたらパンが好きな男だが、今日も相変わらず高カロリーな総菜パンをがつがつ喰らっている。


「あれって何さ?」


「え、地元のニュースとか見てないんですか?昨日から商店街がライトアップされてるんですよ」


「ああ、そういえばそんな話あったね。綺麗なの?」


「まだ俺見てないんですけどツイッターとかインスタでも写真上がってて、結構見栄えするみたいですよ」


と言いながら彼は焼きそばパンに手を付け始めた。食欲が旺盛なのは知っているが、そういうロマンチックな事にはあまり関心がないのかなと勝手に思ってたので、意外と情報通な事も相俟って地味に感心していた。


「そういやツイッターやってるんだっけ?」


「ええ。便利ですしね」


「なんかそういうのって切っ掛けがないと始めらんないよね。アカウントは昔作ったような気がするけど」


「ああ、放置って感じですか」


うんうん頷いている後輩。納得されても少し心外なのだがやはり面倒くさがりに見えるのだろうか。ツイッターの利便性を熱く語った彼は満足そうにメロンパンを食べ終わった。そして昼休みもそこで区切りよく終わる。


「商店街、行ってみようかな」



地元商店街はシャッター通り寸前である。それでも市レベルのイベントなど丁度良い『切っ掛け』があったからか今年は少ない予算らしいが色々工夫して何かをやろうという意図が見える。仕事の合間に「〇〇商店街 ライトアップ」と検索してみるとそこそこヒットし、それらしい記事を発見したので軽く読んでみると商店街の実質的な代表者のコメントが掲載されていて、「是非お立ち寄りください」との事である。



結論から先に言えば、夕刻帰宅途中に僕は商店街に立ち寄っていた。ライトアップはもう少し後らしいけれど何かを模した電飾が相当数設置されていて、自ずと期待が高まる。書店で時間を潰し頃合いを見計らって外に出てみると、そこはいつもとは違う空間だった。


「うわ~」


思わず声が漏れる。青、赤、緑、黄色、色とりどりの恐らくはLEDのライトが商店街を美しくライトアップしている。光によるアートと言って良いだろう。なんとなく一足早いクリスマスのようにも思えたが、情緒感溢れる優しい灯りが摺りきれた心を包み込んで温めてくれるような、幻想的な光景だった。



光に吸い寄せられてきた虫のように、と言っては失礼かも知れないが普段は人気のない商店街も今宵は少しばかり賑わっている。インスタなりツイッターなりに投稿するであろう写真を撮っている人も多くいる。勿論僕もこの言葉だけでは伝えられない光景を誰かと共有したいという気持ちはあるけれど、やはりこの場に居るからこういう気持ちになれるのだろうと思ったりした。ちゃっかりスマホで撮影した写真は思いの外出来が良かった。



帰宅し、いつもより少し遅い夕食を採る。今日は豪勢に肉を喰らってやろうと思って買ってきたチキンナゲットも商店街を通ったから買おうと思ったのだった。



そして、ひっそりとショートケーキを食べようと思った時何の気紛れか、


<あ、ツイッターに投稿してみようかな>


と思いついてしまった。丁度ライトアップされた商店街の写真も見てもらいたかったし、切っ掛けとしては十分だった。PC上でブラウザを操作しツイッターのアカウントのログイン画面に飛ぶ。意外にもフォームにパスワードが保存されていてほぼ自動でログイン出来た。とりあえず写真をアップロードして最後に投稿した2年ほど前の


『つかれた』


というつぶやきの上に写真を表示させる。写真だけだと分らないかもなと思い、


『〇〇商店街 ライトアップ』


と説明ツイートを載せる。そして、何を血迷ったか。


『今日は俺のバースデイ』


と短く呟いた。多分何も起こらないだろうけど、これでいいのだと思えた。




が、何も起こらないわけではないらしい。




次の日の朝、後輩がいかにも申し訳なさそうな顔で缶コーヒーを差し出してきた。


「田中さん、もしかして昨日誕生日でしたぁ?」


「え…そうだけど、何で分ったの?」


「ツイッターで『〇〇商店街 ライトアップ』って検索したらですね、どうもそれっぽい人がいましてですね、最後に『今日は俺のバースデイ』って呟いてて、もしかしたらと思いましてね…」


やたら丁寧口調だが、まさにその通りなのでかなりびっくりしていた。


「ああ、そういう使い方できるんだ。なんか怖いな」


「いえ、それだけでは確証が持てなかったので一応他の人に田中さんの誕生日の話振ってみたらですね、見事ビンゴで」


「そうだったか」


「それでですね昨日はダメでしたけど、今日既に何人か誘ってますよ!呑みに行きましょう!ついでにライトアップも見ようという事です!」


「おお…」


僕は素直に感動していた。期待して無かった分一日遅れの誕生日会はかなり嬉しかった。それに味をしめたわけではないけれど、時々僕はツイッター上で呟いている。それは世迷いごとか、それともその日が特別になるおまじないか。






☆☆☆☆

10月22日はK君の誕生日でした。おめでとうの気持ちを込めて。
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