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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

二本松舞台小説 Uターン 2日目その2

 車は県道355号線を東へ進む。しばらく走ったのちに左折して坂を上ると、右手に二本松工業高校、更に少し行くと左手に二本松文化センターが見える。文化センターでの最後の記憶は数年前の成人式だ。スーツ姿の友人たちと久しぶりに再会し、変わった事と変わらない事をお互いに確かめながら、思い出話に華を咲かせた楽しい記憶だ。
「ちょっと、よそ見したら危ないって」彼女が指摘する。
「ごめんごめん」僕は謝罪の言葉を口にしながらも、懐かしい街並みが見せるノスタルジーから目が離せず、きょろきょろと辺りの景色を伺いながら走った。
 幸楽園のところを左に曲がり陸橋を渡ると、五重塔がちらりと見える。
「わ、何あれ」彼女が運転中の僕の肩を叩く。
「ちょっと、運転中に肩叩いたら危ないって」さっき注意された言葉を真似て裏声で応えると、彼女は「なんで真似するの。そんな変な声じゃないし」と不機嫌そうに言った。

 広い駐車場に車を停める。近接する建物はレストランと土産物売り場が合わさった施設だ。『ふるさと館』というらしい。様々な銘菓や郷土色あふれる品の数々を前に彼女のテンションが急上昇した。女性はなんでこうも土産物を選ぶのが好きなのだろう。
「これは会社の人に――」「これは友達に――」
 いつも通り長い買い物が始まりそうな空気を「それは帰りにね」と制し、僕らは外のアクセストンネルへと向かった。
「土産物なら玉羊羹がお勧めだよ。あれ県外の人に買っていくと受けがいい」
「へぇー、じゃあそれは会社の人に買っていこっかな。それとさ、さっきから気になってたんだけど、あの鬼の子供みたいなのってゆるキャラ?」
「あれは鬼婆をモチーフにした、バッピーちゃんっていうここのマスコットキャラだよ」僕は鬼婆伝説を簡単に説明する。
「それって怖い話だよね」
「昔のバッピーちゃんは今のと違って怖い顔してたんだぜ。色黒で三白眼で牙はえてて」
「ゆるキャラブームにのっかって変更したの?」
「いや、今のバッピーちゃんに変わったはもっと前だよ。決してブームに乗っかったわけじゃない」

 アクセストンネルを抜けると鮮やかな色彩が広がる。左手には先ほど遠くから見た五重塔がそびえ立つ。

ふるさと村1

ふるさと村3

 道に沿って右側の建物へと向かう。そこで建物の内装ががらりと変わっている事に驚いた。
「げんきキッズパークだってさ! こんなの出来たんだ!」
「子供が遊べる施設なの? いいねいいね」
 二人で興味津々に中を覗き込みながらも、立ち寄れる理由が無いため素通りするしかない。しかし無邪気に遊具で遊ぶ子供たちを見ていると心が和む。

『げんきキッズパーク』を抜けると広々とした景色が広がっていた。

ふるさと村2

 夏の日差しを、草木や池が反射している。その眩しさに僕らは眩しさに目を細めた。

ふるさと村4

 古い家屋の外観を眺めながら広場内の歩道を歩いていると、不思議な感動が胸の奥底から湧き上がった。自分が過去から未来へつながる流れの一つにすぎないという事、そしてその大河の水滴一つ一つが、悩み苦しみ喜びを繰り返しながら未来へと向かっていたという事。
 みんな必死で生きてきた。
 その結果、今は僕たちが彼らのバトンを握っている。
 僕が先人たちに対して優しい気持ちになれるように、今僕の口から洩れる悩みや嘆きの言葉も、いずれは優しい気持ちで耳を澄ますせせらぎの一つとなるのだろうか。
 そうだったらいいなと僕は思った。

 広場内を一周して『げんきキッズパーク』へと戻ってくる。
 小さな子供を連れた若い夫婦とすれ違った時、彼女がぼそっと呟いた。

「いつか子供を連れて、ここに遊びに来たいな」

 聞こえてはいたけれど、僕は聞こえないふりをした。
 僕も同じ気持ちだった。
 けれどこの気持ちをお互いが言葉にして語り合うには、時期尚早な気がした。
 言葉に出した瞬間、汚れを知らない夢想に現実という手垢が張り付き、その輝きが損なわれるような気がした。
 もうしばらく、夢はきれいなままで、宝箱の中へと仕舞っておきたい。
 僕の抱える問題の全てにかたが付き、今日の思い出を次に開けるその日まで。

 帰りがけにお土産を大量に買いこんだ彼女は、ほくほくの笑みで車に乗り込んだ。


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