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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

二本松舞台小説 Uターン 2日目その1

『今回の件の責任が全て君にあるとはいわないが』後頭部を鷲摑みにされ額を地面に押し付けられるような、重く高圧的な声がする『会社に損害を与えたにもかかわらず、君はのうのうとお給料をもらい続けるつもりなのかな』
周りの景色が赤黒く変色して行く。まるで腐敗が進んだ林檎のような、人間の臓腑を思わせる色だ。人間も一皮剥けば、腹を割って内臓をさらせば、こんなにも薄汚い内面が隠れている。思惑という様々な臭いの交じり合った、臓物のような内面が。
「ちょっと、大丈夫?」
聞きなれた声に目を開ける。
見慣れない天井が僕の目に飛び込んできた。
「なんかすごい、うなされてたけど」
心配そうな彼女の顔が僕を覗きこんでいる。床に散らばったビーズのような記憶を寄せ集め、新しいものから順に糸へと通していく。昨日までの出来事が時系列にそって組みあがっていく。
ここは僕の実家だ。
僕は今、故郷にいる。
二人で着替えを済ませ1階の居間へ降りる。両親はもう仕事に出ていたが、炊飯器の中には二人分のご飯が残っていた。
昨晩、実家に向かう車の中で彼女を連れて帰省する旨を伝えたが、母親は特に訝る様子も無く「布団は二枚敷いとけばいいの?」と返してくれた。両親は共に悪く言えば放任なところがあるが、良く捉えればこんな不肖な息子に対しても、ある程度の信頼を寄せてくれているのかもしれない。
「私、朝食の準備手伝わなくて大丈夫だったかな?」
「大丈夫でしょ。晩飯に何か作っとくと喜ぶかもね。得意のハンバーグとか」
「うん、そうしよう」
「そんときにあらためて紹介するから、自己アピールを考えといた方がいいよ」
「就職活動じゃないんだから」
朝食を食べ終えると、彼女の化粧が終わるのを長々と待ってから、僕達は家を出た。
車は二本松駅前のコインパーキングで停車した。
「ここが二本松駅」
「立派な駅だね」
「僕が県外に出てから改装が進んだみたい。あ、跨線橋にエレベーターがついたんだ」
僕は現在交番があるあたりをぷらぷらと歩く。
「昔はここに駐輪スペースがあってさ、敷地にはビリヤードが出来る施設があったんだよね。コンビには今より若干駅寄りで、高校帰りにそこで肉まんを買って食べてたんだ」
「なんかいいな。私バス通学だったからそういう経験ない」
確かに、あの頃は「なんかいい」感じがいっぱいだった。学校帰りに友人とコンビニで肉まんを買って食べながら、ゲームや漫画や小説や勉強やクラスの気になる女子について語り合う。物質的な生産性などにとらわれない、感情の高揚を唯一の価値とした時間。
あの頃の僕らは、なんて贅沢な時間の使い方をしていたのだろうか。
コンビニでお茶を買うと(今回は先を見越して僕の財布から1000円分チャージした)、駅前通り経向かう緩やかな坂道を上る。
右手にはアーバンホテル。少しいくと左手には若者向けっぽい居酒屋が出来ていた。
二本松駅前はなんというか「白に近い灰色」のイメージがある。閑散としたもの悲しさを感じる色合いだけど、その芯には落ち着きや強固さも感じる。
「ちょっと二本松神社で、願掛けでもしていこう」
駅前の県道355号線に出た僕達は、砂利の参道向こうの鳥居をくぐり、長い階段を登った。

二本松神社

階段の両脇を覆う濃緑が、木漏れ日を受けて薄緑に輝いている。
セミの声が降りそそぐ。長い歴史の中で繰り返されてきた蝉時雨。
清閑な空気が僕達を包み込んだ。
3分の1を過ぎたあたりで「ちょっと、きつい」と彼女は言う。
「もう少しだからがんばれ」と僕は励まし、その手をとって引っ張ってやろうとするが「恥ずかしいからやめて」と払われた。
階段を登りきると、右手に社務所、奥に本殿が見える。
記憶の中にある神社よりも明らかに立派で、僕は少したじろいだ。
僕が二本松神社に来た記憶は、覚えているのでは初詣くらいだ。参拝客で賑わう境内で僕は――小さい頃は同級生や気になる女子と会うのではないかという期待もあってか――他の参拝客にばかり目が言ってしまい、肝心の神社自体に目を向けていなかったのだろう。
平日の午前中に参拝に訪れて、初めて二本松神社そのものと対面した気がした。
「一時期、元旦の夜に友人たちと毎年初詣に来てたんだよね」
「へー偉いね」
「バイトの巫女さんを眺めに」
「最低」
本殿の前に立つ。
お賽銭を入れて、鈴を鳴らし、二礼二拍手一礼を行う。
『全てがうまくいきますように』
そんな漠然とした傲慢な願いを、神様は聞き入れてくれるのだろうか。
参拝を終えて階段を下る。
「次は、安達ヶ原ふるさと村にでも行ってみようか」
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二本松のこと、競馬のこと、これから手探りで何かを
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