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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

『燕のジョナサン』

今からはるか昔。

鳥たちはただ人間たちから一方的に狩られる悲しき運命を背負っていた。
既に絶滅し、今を生きる人間からは既に忘却された種族も決して少なくはない。
忘却されたがゆえに、どういった鳥類の種族がかつて存在し絶滅の一途を辿っていったのか…ということさえも人間たちの間では語られることはない。加害者の側はすぐ忘れることが出来るのだろうが、被害を受ける側の傷はそう簡単に癒えはしない。

燕のジョナサンはそんな鳥類の歴史を長い間愁いていた。
しかし、どうすることも出来ずにただ悶々と鳥類、いや自分の種族の行く末を案じていた。
子孫繁栄の本能を持つのは、人間だけではない。

幸か不幸か、燕のジョナサンは他の鳥類よりも体は小さいが非常に優秀な頭脳を持っていた。
嘴の先からその身の末端までおよそ17センチであり、この全長は雀よりも一回り大きいとされているが、体重はその対比者(およそ25グラム)よりも軽い17グラム。悲しいかな、この体の軽さは渡り鳥の遺伝子が彼らを飛行することに特化させた結果であるといえる。

寄生木が育ち始める時、燕のジョナサンはそれが鳥類全体に危険を及ぼす可能性があることを考え、率先して鳥たちを残らず集めることにした。
『考えすぎか。杞憂に終われば良いのだが。』
そう考えたジョナサンであったが、やはり頭が良い分だけ色々と考えてしまう性質らしい。
やがて召集をかけていた鳥たちが次第に集まってきた。その中には鷹や鷲をはじめ、梟、烏、鳩、鶴、白鳥、インコ、鶏、そして先述の雀などが名を連ねている。全員が集まったことを見てとって、ジョナサンは
『みなさん、寄生木が我々に危険を及ぼす可能性があります。この寄生木を伐り倒すか、それが出来なければ、誠に不本意ではありますが人間たちの所へ助けを求めにいきたいと考えているのですがどうでしょうか?』
集まった鳥類の中から、梟が答えた。
『まったくもって不本意だ。なぜ我々の敵である人間どもに助けを請わなければならないのか?』
それに鶏が賛同する。
『梟の考えに同意である。百歩譲って人間どもに助けを求めに行ったとしてもだ…我々は彼らの鳥類狩りの対象となることは火を見るよりも明らかである。』
『そうだ、飛んで火にいる夏の虫とは正にこのことです。』
『益体もないことをいう奴だ。ジョナサンは、けしからん。そんなに言うのなら君が人間どもの所へ行けば良いのだ。』
最後に雀と鷹が答えた。
他の鳥類も同じ考えのようで、燕のジョナサンの考えを一笑に付した。

皆にそうまで言われジョナサンは困惑したが、鳥類の将来をかねてより危惧していた彼は自らが嘆願者となることにした。
『頼みに行ったところで人間たちにただ狩られるだけなのかもしれない。』
そういった危険性を考えたジョナサンであったが、事態は意外な結末を迎えることとなった。

人間たちの代表は、ハーパーという名を持っていた。
ジョナサンはハーパーに寄生木が鳥類に及ぼす危険を説明し、それに対して人間たちへ寄生木を伐り倒してくれるよう必死に懇願した。
ハーパーは答えた。
『ジョナサンといったな。君の勇気には恐れ入る。それに頭も良いようだ。君に協力しよう。』
『ありがとうございます、ミスター・ハーパー。これで鳥類も助かります。』
『勘違いしないでほしい、我々は鳥類を助けるとは言っていない。あくまでも君に対してだけ協力する。』
『それでは困ります、ミスター・ハーパー。私は鳥類の安全を願ってここまで来たのですから。』
『では問う。危険を顧みず我々のところへ嘆願に来た君に対して、他の鳥類は君に何をしてくれたのだ?』
ジョナサンはその問いに対して何も答えることができない。
同時に自分に対して浴びせられた罵詈雑言を思い返した。
その瞬間である。燕のジョナサンが何故か、自分の一族だけの安全を考え出したのは。
『確かにそうだ。私があれだけ忠告をしておきながら、誰も同意をしなかった。それどころか、嘆願にはどいつも同行しようともせず、ただ私を嘲笑の対象として見下していた奴らばかりではないか。』

ハーパーは言った。
『どうだね、他の鳥類は君に何をしてくれたのだ?』
『ミスター・ハーパー、あなたの仰る通りです。他の鳥類は私のことを、益体もない奴だと罵りました。他の鳥類は見捨ててくださってかまいません。ですが、私共燕一族の存続についてだけはご協力ください。我々は、将来雨が降ることをあなたがたへお伝えすることが出来ます。』

『燕が低く飛ぶと雨が降る』とはこの頃から言われるようになった。
今と違って天気予報など無い時代である。
長い間、人間たちが作物を育てる上で懸念されていた天候への悩み・不安がこれで解消されたことは言うまでもない。

ハーパーら人間はこの後寄生木を伐採し、人間と一つ屋根の下で暮らすことを許可した。
そして他の鳥類たちはハーパーらに悉く狩られることとなるのだが、燕の一族だけはその身と自由を保護され、人間たちの家の中でも安心して巣造りをすることになった。
その証拠に他の鳥類の子孫たちは今でも巣を屋内に造ることはない。

~ イソップ物語 第39『燕と鳥たち』より ~
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