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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

K君リクエスト 「ザ・クレジット4」

友人に真実を聞かされて思った事は、友人の祖父も、友人も、また地元の人の反応もどれも仕方のないものだという納得であった。友人の祖父が目撃したものの真偽は僕にも分らないけれど、それからの事はどうにも避けようのない事で友人があの日僕に話したのも無理からぬ事だったと僕自身も思う。


分らない事と言えば、その後の目撃談の方である。特に同僚から聞いた目撃した一人が失踪したという話は多分新聞などで調べても出てこない話だろうし、それこそ噂話なのかも知れないと思える。あくまで周辺的な話としてしか感じられなかった。



が、結果的にはその認識が元で僕の体験したことがあるのだろう。



正直言ってこの先を語る事は僕の正気を疑われるかも知れない。夢でも見ていたと思った方が実際は気が楽である。だが、その時の外界のディティールは確かに現実のそれで、夢とは明らかに区別されるものだった。だからこそ、現実にはあまりにも醜悪なそれを見てしまう事は現実にそういうものを認めるという事であり、僕はそれを思い出そうとする度に現実ではなかったと思いたくなる。






底冷えのする2月の事だった。その日仕事の残業が夜遅くまであってまだそういう事に慣れて居なかった為異様に頭が重くなってしまい、仕事が終わってもすっきりしないので少し冷たい外気にあたった方が良いのかも知れないと思った。そして近くの堤防、サイクリングロードの辺りを今思えば何の躊躇いもなく歩いていた。その時には既に僕の中で「G」の話は完結していたのである。


その時、堤防の下の方の河原に夜だというのに人影が見えた。月が出てなかったのでぼんやりと視認できる程度だったが、やや小柄なのが印象的だった。夜も遅いが<もしかして子供なのかも知れない>と思ってしまった。そう思うと一応確かめた方が良いと考えて、階段から下に降りる。その人影の方もこちらに気付いたのか、ゆっくり歩いてきているのが見えた。



だが、階段を降り、近づいてくる「それ」を見つめ続けると、「それ」は影として暗いのではなく身体が奇妙にも「青い」ためにそう見えるという事が分った。何かの見間違えかと思ったが、たまたまそこに弱々しくも電灯が立っていたため色ははっきりと青であるという事が分った。そして小学校低学年の子供くらいしかない身長は、既にして異様で、その手には何か棒の先端にキラリと光る刃がついたもの、鎌の様なものを持っていた。



それくらい見えてくると次第に恐怖が沸き起こってきて、意識にもあのアニメキャラクターが連想されてしまっていた。そんな筈はないのに、そういう「もの」が確かにそこに居る。だがアニメキャラクターと究極的に違うのは、何処を剥いているか分らないが大きく見開き血走っている目と、大きく開いたまま今にも何かに噛みつこうとしているような歯であった。



「G…」



僕は無意識にその呼び名を発していた。もう既に奇怪で非現実的な存在が目の前にいることは疑いようもなかった。その瞬間、友人の祖父の「本能が訴えてくる」という言葉が実感された。これが幻だとかそんなことよりも、「こいつ」に何をされるか分らない、ただそういう感情だけに支配されてしまう。



『らっしゃっしゃ』



そしてそいつは僕を見て悍ましい声を上げた。この世の生き物が発していいような声ではない。更に気味が悪いことにそいつは人語を発した。


『貴様は俺に何を望む?下等生物よ』



罵られている事は分ったが、理解が追い付かない。ただ茫然と、


「お前は、なんだ…」


と訊くのが精一杯だった。そいつは再び気味の悪い『らっしゃっしゃ』という嗤い声を上げた。


『貴様が何を望もうと俺は貴様の腸を喰らうだけだがな』



そいつの言葉は生理的嫌悪を催すものだった。そいつに腸を喰われる想像をして冷や汗が滝のように出てくる。脂汗かも知れない。とにかくその場を逃げ出したい気持ちで一杯なのに、足がすくんで動けない。と、そいつは持っていた鎌を思いっきり降り上げ、こちらに向けて薙いできた。すんでのところで躱したが、スーツの真ん中あたりが切れてしまっている。



最早判断している暇もなく本能的に逃げていた。階段を駆け上がる事で比較的歩みの遅いそいつに差をつけてあとは死に物狂いで逃げていた。


「Gだ、Gだ、Gだ」


逃げながら僕はそう連呼していた。今思えばまるで自分に言い聞かせているようでもあった。何とか人の居る駅に辿り着いた時には既にそいつの姿はなく、駅で着衣が乱れ息を切らしている僕を見て周囲の人は気味悪そうだった。一刻も早くそこを離れたい気持ちだったので、丁度出発時刻だった電車に駆け乗る。その後の記憶は曖昧で、とにかく家に辿り着いて同居していた両親に心配されたところで力尽き、眠って起きたら次の日の夕方だった。両親の話だと眠りながら大分うなされていたらしい。寝言で苦しそうに「Gが、Gが」と言っていたのが尋常ではない様子だったと後から聞いた。僕は数日間、休みを貰う事にした。




僕はあの日の事を大分経ってこうして振り返っている。無意識だったが電車に乗っていたときに混乱しながら友人にメールを送っていたらしい。


『Gはいた 本当だったんだ 見てしまった』


その返事が今届いて、


『そうか…』


とだけあった。自分でもあの夜の事は信じられない気持ちもある。けれど掻っ捌かれたスーツの真ん中を見ると最早あれが本当にあった事であることは疑いようがない。これはちょっと破れてそうなるものではない。けれど本当にあった事だとするなら、いまだに背筋が凍りつくような気持ちで、もうそれ以上考えられない。



そして僕は悟った。友人の祖父ではない後の目撃者が失踪したのは多分、もうあの場所に近づきたくなかったからではないだろうか。いやそれどころかあいつに関する記憶そのものも抹消したい、抹消しなければ神経が持たなかったからではないだろうか。周辺事態どころではない。むしろ友人の祖父が強靭な意志で今も精神を保っている方が奇跡なのではないかと思える。友人を介して友人の祖父からのアドバイスがあった。


『とにかく意志をしっかり持て。自分の今なすべき事を忘れるな』


だそうである。確かに僕にはこれからの人生がある。たとえ「あいつ」が本当に居ようがいまいが僕は僕の生活がある。多分、それが大切なことなのだろう。



とはいえ、あの堤防を通りがかる時、この世のものとは思えない声で醜悪な嗤い声が聞こえるような気がして今でもあの時と同じような冷や汗と脂汗が染み出してくるのは最早どうしようもない事なのだろう…



(おわり)
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