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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

K君リクエスト 「ザ・クレジット3」

その会社の人とは以降その話をしていないのだが、その人を良く見ていると物知りで細かいところによく気が付くタイプだった。話を聞いた時こそ<じゃあ何故その話を貴方が知ってるんですか>と思ったけれど、多分だが彼も一度気になって調べた事があるのではないだろうか。そして彼なりに「深入りしてはいけない」という判断をしたのだろう。普段は別にあの事を気にしている素振りもない。


確かにそれは一つの答えだった。こうして普段通りの日常と仕事は続いているわけだし、無暗に追っていかなければ自然と処し方が身についてくる。タブー化するというのはある意味でそこから意識的に目を逸らす事で日々の生活に集中するという意味合いもあると思う。幸い会社が実家に近い場所だったので実家で一人悶々と考えるような事にはならず、ある意味でかなりバランスの取れる判断が出来ていた。当面集中する事に集中するという風に決めた、という事もある。


事態が変わってきたのはおよそ半年後の明けて新年となった頃である。その2ヶ月ほど前から中学時代の同窓会の案内が実家に届いていたのだが、そこそこ思い入れもあるし自分がどれだけやれているか周りに示したいという気持ちで参加を決定。実家からそれほど離れていない場所が会場で、恐らく成人式以来久しぶりに会った友人達が続々と集まってきた。


「やあ、元気だった?」


その中に、あの友人がいた。気さくに話しかけるのでこちらも思わず、


「やあ、久しぶり!」


という感じであまりあの話を思い浮かべないように、普通に接していた。だが、友人の方が就職先のあの場所のところになると、


「そうか…あそこになっちゃったか…大丈夫かな」


といわくありげな事を素直に表現した。会社の人が「タブー」と云うのとは対照的にこの友人はあまりそれを隠そうという気もないらしい。


「なんかそれ地元だとタブーなんだって」


それとなくこの場ではあまり話したくないという事を伝えるためにタブーという言葉を敢えて使う。すると彼は妙に明るい表情で、


「うん。そうだね、だからお爺ちゃんが」


と何かを言いかけた。突然出てきた「お爺ちゃん」という言葉が何を意味するのか分からず、「お爺ちゃんがどうしたの?」と訊きたくなった。ただ、会場内で会食をする時間になったので一旦場所を移動する。当時の先生を迎えたり、代表の挨拶があったりで会場は賑やかなムードになったが、僕だけは何となく上の空だったような気がする。会食の時間となって各々席を動き回りながら中学時代親しかった人と話したりしながら過ごし始める。僕も当然その友人意外にも話したい人が居たので、気になりつつも席を動いて沢山の人と喋っていた。


ところが次第に雰囲気が落ち着いてくると、元の席でゆっくり話をしましょうという感じになって必然的に友人の隣で話が始まった。


「さっきのお爺ちゃんっていうのは?」


どうしてもそれだけは訊いておきたかった。


「最初の目撃者だよ。実際にあった事件を目撃した人って事だね」


「え…それって」


僕は読んだ知識を思い出し始めた。確か『〇〇川事件』で目撃した人の証言から事件がセンセーショナルになったのだ。確かその後週刊誌にもインタヴューを受けている。その人が彼の祖父だというのだろうか?


「そうだよ」


まるで僕が考えている事を読んでいるかのように彼は肯定した。なんとなく不気味だった。


「当時20歳だったお爺ちゃんは今70くらい。事件の10年後父が生まれて、30年後俺が生まれた」


「計算は合ってるのか…」


「お爺ちゃんが『タブー』なのは小さい頃から知ってたよ」


と彼は知られざる過去を静かに、それでいて涼しい表情で語りはじめる。


「お爺ちゃんは狂っているのかでいえば、決してそうであるとは言えないと思う。まあ希望なのかも知れないけどね。少なくとも頑固で自分の見たものしか信じないタイプだったし、厳しい人だったよ。事件以降人間不信に陥ったというのか世間に対して絶望したというような事を言っていたけれど、それが本音だと思う」


「確かに、腫れ物に触るような扱いを受けていたんだったら…」


「父の方もあまり良い思いはしなかったようだけど、その後も続いた目撃談の事を聞いて「あり得る事だ」と思ったらしいね。だから別に家族の方は狂人扱いはしてないよ。君に話した時の辺りに、色々知りはじめた俺はお爺ちゃんに直接聞いてみたんだ」


「そしたら?」


僕は既に好奇心の虜になっていた。聞かない方が良いと理性は訴えるが、一方で知らないという事が罪のような気がしてしまうのだ。


「お爺ちゃんはまず俺にこう言ったよ。「信じる信じないは自分で決めろ」」



「自分で決める…」


すると友人は肩をすくめるようにして、


「まあ確かに信じれる人と信じれない人がいるよね。結果的には俺はどっちでもなかった。だから誰かの判断を仰ぎたかったのかも知れない」


と続けた。そして一旦こちらを窺うようにして、すまなそうな表情をした。


「そんな折だったよ。君と俺の実家の…つまりお爺ちゃんが住んでいる所の近くを歩いて、思わず噂話として君に話してしまったのは」


「そうだったのか…」


最初は不気味な様子だったけれど友人も友人で悩んでいてそうしたのだなと理解できると急に警戒心が解けていった。


「ただね…」


それでも何かが残っているかのように彼が言う。


「お爺ちゃんはこうも言ったよ。「見たものを信じなければ危険だと本能が訴えてくるような『何か』だ」って」


「つまり…?」


「もしそいつを見たら、本能の通りに行動しなければ危ないのかも知れない。幻覚だと疑っている暇もなく…」


それで「G」に関する話は一応終わった。友人とは取り敢えずメールアドレスを交換して、連絡を取れるようにしておいた。不思議な事ではあるが、知らない事が減ったからなのか逆に信じようという気持ちもほとんどなくなって、漠然と大丈夫だろうという気になってしまっていた。
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