FC2ブログ

スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

K君リクエスト 「ザ・クレジット」

「G?ゴキブリ?」

僕はその友人に訊ねた。彼はその時確かに「G」(ジー)と発した。Gといえば普通はゴキブリを浮かべるのでもともと良いイメージはないのだが、彼が「Gって知ってる?」と僕の目を窺うようにして言ったので何だろうと疑問に思ったのである。


「いや、違うんだって。何かね噂で聞いた話なんだけど、昔この辺に住んでる人が怪死を遂げたとかで、目撃者がアニメのキャラクターに似てるんだけど何か目が血走っててそうじゃない「何か」に、その人が腸を喰われてるのを見たとかって半狂乱でみんなに話したそうなんだけど…」


友人はいかにも不気味でそれ以上語りたくなさそうな様子である。


「話したんだけど?」


「その怪死を遂げた死体がさ、その人の言うように腸が…」


「なかったとか?」


彼は何も言わず頷いた。僕はその時、友人の表情がからかおうとしているのではなく本当にそれを信じているような風だったし怖れてもいるようだったのでよくある都市伝説の一つのようには片付けられず何も返す事が出来なかったのを覚えている。でもその後そんな噂を殆ど聞かなかったし、時間が経ちその友人とも別々の進学先になってあまり連絡を取り合わなくなったのもあり、次第に記憶から薄れていってしまっていた。



そもそもあの日の夕方二人で歩いていたのは地元から少し離れた街の川沿いのサイクリングロードで、その時はたまたま部活の遠征があって帰るまえにその辺りを少しぶらついてみようという事になったのである。噂の真偽はともかく、自分はあまりその街と関わりが無かったので意識する事は滅多になかった。




それから更に数年後、ある意味忌まわしい風習とも言える就活をしていた頃だった。たまたま狙っていた企業がその街に本社があるというので面接を受けるためにその辺りに立ち寄った時に、


<あ、そういえばここら辺だったよな>


とふと友人と歩いてきた時の記憶が蘇って、ぼんやりと「G」という言葉を思い出したのである。ただ中学生くらいならともかく、その歳になってまでそんな荒唐無稽にも思える話を改めて信じる事など出来なかったし、再び川沿いを歩いていても平凡で穏やかな感じしか漂わなかったのもあって、「まさかな」と呟いたきりすっかり考えなくなった。


面接が無事終わり帰りにその辺の食堂で昼食を取っていたのだが、どうもその店と主人の様子が外見に比べて暗いというのか馴染まないところがあり、料理自体は美味しかったのだが僕の他に客もおらず静か過ぎたので思わず主人に話しかけてしまった。


「あの、この辺りって何かありますかね?」


僕はここに来たついでに何か名所などあれば立ち寄るつもりで訊いたのだが、主人は何を思ったのか僕の方をじろっと見て、


「この辺りを好き好むような奴はいないさ」


と食堂にはあるまじき発言をしたのでびっくりしてしまった。不可解だったし、


「何故ですか?」


と訊いたのは仕方ない事だろう。こちらが訊いているというのに主人は目を逸らすように俯いて、


「『〇〇川事件』で検索して見れば分る」


言ったきり押し黙ってしまった。『〇〇川』とは昔友人と歩いて今も通りがかったあの川の事であると知ったのはスマホで検索してからである。それは詳細を調べてみると大分前の事件であるようだった。凡そ40年ほど前、勿論僕がまだ生まれていない頃だが、丁度有名なアニメが始まったばかりの年だった。友人が噂話として話してくれたような『怪死』事件が実際にその川の河原であったらしい。その文字列を見た瞬間、背筋がざわっとするような感覚になってしまった。その事件の特殊性は事件の現場を目撃したと主張する人物が一人だけ居た事である。ここからが気味の悪い話で、


『確かにその人物が主張するように、被害者の腹部は鋭利な何かで切り開かれたようになっていて臓器が食い千切られたようになっていたが、当時開始されたばかりの某アニメのキャラクターに似た何かの仕業だという奇妙な発言が混ざっていたために証言としては信憑性を欠いている。一部週刊誌はその後その人物に直接取材をした結果『謎の存在』の実在を主張したが、その人物が目撃したのは本当かも知れないがショッキングな事件とブームになっていたアニメを奇妙に結び付けてしまったという「発狂説」が一般的な解釈であった。その後の警察の捜査も虚しく迷宮入りした』



という生々しい記述が本当にあったのである。つまり友人の話は噂というよりもかなり古い事件が実際に彼に噂として伝わった結果だったという事だ。事件自体は忘れられたかもしれないが某アニメの方は今も続いているので、友人に聞いた時ににもアニメキャラクターに似ているという証言ははっきりと伝わっていたのかも知れない。



この文章自体を純粋にネットで検索して読んだだけなら特に感じる事はないのかも知れないが、食堂の主人が暗に伝えようとしている事が分ってしまったからなのか、この話を初めて聞いた時のように何も言えなくなってしまう心境になってしまった。その時は思わず慌てて店を出て何も考えず早く帰ってしまったのだが、常識的に考えれば40年も前の事でここまで動揺しても仕方ないと思い直した。主人としても僕に気を付けてもらおうと思っただけかも知れない。幸か不幸かでいえば幸で一週間後、自宅に企業からの採用通知が届いたが、まだ内心複雑だったのを覚えている。


(つづく)
スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

二人の管理人

Author:二人の管理人
ブログには珍しく二人の管理人で更新してゆくブログです。

二本松のこと、競馬のこと、これから手探りで何かを
やってゆこうと思っています。




最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ただのカウンター
フリーエリア
投票
google+
プロフィール
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR