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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

僕等のぼんくらリターンズ3

地元で少しばかり有名になりつつある『カンカラおじさん』。奇抜な服装と、奇矯な言動は多くの人に受け入れられないものの、ごく少数の人々からは理解を得ているらしい。以前私がカンカラおじさんの処を訪問したとき帰り際に言われた、


『まあ、あんたみたいな人に限って、こういうのに好かれるんだけどな』


という言葉がその後しばらく耳に残ってしまい、妖怪の類についての話はなるべく締め出して居たのだが、よくよく考えてみると怖がっている方が馬鹿馬鹿しいと思うようになって、大分時間も経って何もなかったのだからもう一度『カンカラおじさん』の話を聞いてみて、考えるに値しないならそのまま無視してしまえばいいのだと思い至るようになった。


とりあえず敢えて見ないようにしていた『カンカラおじさん』についての情報を収集する。地元に住む人から直接聞くこともあるが、基本的にはSNSなどでである。興味深いのはネット上に

『カンカラおじさんの迷言』

という見出して彼が訪問者に語った言葉を紹介しているサイトがあったという事である。箇条書きで少しばかり作成者の解説が入っている。例えば、



・それは見えないものといえばそうだけれど感じていないわけではない(「それ」が何かという事ですね)

・変わり続けるからこそ捉えられないと言った方が良い(非同一性・・・という事でしょうか?)




などである。括弧の中は作成者の解説だ。まあ、一通り読んでみるとそれなりに理屈は通っていて、「そういうもの」があるとしてもおかしくはないとは思う。ただ実際、それは物理学の範疇で捉えられるものではないようなので、非科学的と言うのか非現実的ですらある。一番面白かったのは、


・この町にきた理由・・・というのか意味があるとすればそういうものを追って来たらここだったって事かな(・・・N市一体何が?)



ここN市に来た必然性があるという事は、N市が何らかの意味で特別という事である。何となく不気味だったのだが、それはとにかく『カンカラおじさん』に直接訊きただせばいいのである。都合の良い話で、『カンカラおじさん』は基本的に来るものを拒まないようで「店の物を買え」とかいう話にはならないようである。逆にそういう態度だからこそ謎なのであるが、調べる限り文字通りの意味で「危険」な人ではないようである。



さて、二度目の訪問。既に季節は冬になっていて、市の中心も雪が目立つ。人通りが少ない商店街を歩いているとそれだけでちょっと勢いがなくなってしまうのだが、お馴染みの神社を通り過ぎ、しばらく歩いたところでその「店」のようなものを見つける。


「はぁ…本当に入るのかぁ…今日来るのは俺くらいなもんだろう」


と思って入店したのだが早くも予想を裏切られる。店には既に先客が居て、それは同い年くらいの男性だった。地元で見た事があるような、ないような、微妙なところだったが奥の椅子に座っていた『カンカラおじさん』と話している言葉からは、ここ辺で良く聞く「訛り」があっておそらく地元民だと思われる。


「あ、誰か来ましたね」


「あ、そうかい」



男性は私に気付いたようである。一応礼をしておく。


「どうも。あの今日ここに来るのは2回目なんですけど、こちらにはよく来られるんですか?」


「あ、僕ですか?はい。まあそこそこ来ていますよ」


「私と同じくらいに見えますけど、もしかして地元の方ですか?」


「そうですよ。一中出身です」


「ええ、そうなんですか!私は三中なんですけど、あ~そうですか」



市内の中学校でも比較的近いところだったので何となく嬉しい気分になる。と思ったものの、おじさんと先ほどまで仲良さそうに話していたのもあって、ほんの少し警戒心が生まれた。それでも勇気を出して『カンカラおじさん』の方を向いて話しかける。


「そのですね…今日は以前来たときに私が『こういうもの』に好かれ易いと言われたので、もう少し話を訊いてみたいと思いまして、来た次第で…」


「ああ、良いよ。訊きたいことがあれば答えるよ」



『カンカラおじさん』は事もなげに言った。パイプを燻らせ、紫を基調とした派手な出で立ちで泰然としているその様子からすると意外と親しげである。以前の印象とは少し違うような気がした。


「あの…失礼かも知れませんが、以前より少し何というのか…その…」


「雰囲気が変わったって言いたいんだろ?」


「え…?」


考えている事を読まれているようで吃驚したのだが、もしかすると本人にも自覚があるのかも知れない。


「いつも言っている事なんだけど、俺には同一性がないといえばないんだよな。まあ変わり易いんだ」


そこは変わらないようである。変わり続けるという事において変わらない…というややこしい話だけれど、具体的に『カンカラおじさん』みたいな人といえば分かり易い。隣にいた男性も頷いている。少し落ち着いてきたので、本題に入る。


「気になって自分なりに少し考えたのですが、そもそも『そういうの』っていうのは、目に見えないけれど変わり続けている何か、という事なのでしょうか?」


「『何か』と言うことは果たして正しいかという事だね」


「へ?」


私がきょとんとしていると、おじさんは徐に立ちあがって飾ってあった一つのオブジェを運んできた。それは尖っていたり、くねっていたり、離れているようで繋がっている何とも言えない「物」だった。


「これを見ると分るけどさ、何処を切り取って『何か』と言うかでだいぶ変わってしまうよ。そして『何か』があってそれが変わり続けているのか、それとも全体が何なのか分らない変わり続けている「様子」だけがあるのか、どちらだと思うかで、意味合いが変わってきてしまうだろ?」



「変わりつづける様子…?」



「そう。繋がっていて一つなのか、離れていて別のものなのかもよく分からない…そういうのを指すのってカオスとかが適切なのかね?どうかな?」


と言って隣の男性に目を向けるおじさん。


「カオス…といえばカオスですけど、そこから秩序が生まれて来るとかそういうのもよく分からないですからね…おじさんが言ったままの様子なんじゃないですか?」



「言ったままの様子?」


何だか妖怪というよりも哲学じみている話である。少しばかり齧ったことがあるけれど、難しいという記憶しかない。


「そうだな。とにかく言葉で説明しようとはしているんだけれど、細部まで説明しようとしたら絵とか書いたり造形した方が早いって感じだな」


「…」


話としてはそれで分かる気がするのだが、肝心な事を訊いていない。



「つまりそういう…が本当にあるんですか?」


『カンカラおじさん』はしばらく難しい表情をした。隣にいる男性も様子を見守っている。


「本当にある…というのかで言ったら、少なくとも俺の中にはあるんだろうな。それが他の人にもあるかどうかは分からない」


「分らない…?」


「そうだ。だからこうやって、そういうのが他の人にもあるかどうか確かめる為に書いたり作ったりしてるとも言える」


「もしそれが他の人にもあるという事になると、それが妖怪のようなものになるんですか?」


男性がおじさんに訊いた。


「まあそうだろうな。こういうのを見て既視感を覚えるって事は、共通の経験って事だ。少なくとも普遍性はある。あるいは特別な人にはある。じゃあ分る人の間でそれをコミュニケーションツールにしてしまえばいいという気もするがね」


「でもそうなったら、分らない人は奇妙に思うはずですよ?」


「そこはあれよ、『アバンギャルド』の皮を被っていれば天下御免さ!!」


「…芸術のような、なんか違うような…」


「ちげえねぇ!!ははは!!」


私はこの時、以前おじさんが何故「こういうもの」に好かれ易いのかということが何となく分るような気がした。おじさんのいう「こういうもの」は、案外自分が良く知っているものなのかも知れない。私は勝手に、それは「ノリ」のようなものと同じで、それが分る人には分るようなもので…



要するに、私はこのノリが分るタイプの人間だったのである。
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