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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

僕等のぼんくらリターンズ2

『あの頃の僕等は輝いていた』


そんなわけはないのだが、セピア色の思い出フィルターに通された映像が所々思い出補正がかかりキラキラしながら「こんな事が昔あった」と訴えてくる。個人的には中高時代の事の中には半黒歴史…つまりグレー歴史があって思い出したくない事もあるのだが、一般的にはこのクソ重たい現実でどうにもならないままちょっとみじめに踏ん張っている今よりはお気楽で、まあ平たく言ってしまえば一人ではなかったから結構色んな事を出来ていたし、輝きを感じないと言えば嘘になる。


とはいえあの頃よりも色々な事が当たり前に出来るようになった自分がいて、それと比較すれば単に「輝き」を感じないだけで、それなりに良いのかも知れない。まあそう思ってないとやってられないというのが実情だが、にもかかわらず、そういう悪足掻きが出来る程度にはまだまだ腐ってはいない。



ところで自分は今その頃の事を思い出したいのではなくて、目の前にある奇妙なオブジェに既視感があるという事を主張したいのである。



ここはしばらく活気のない地方のよくある商店街。何気なく立ち寄った謎の店には奇怪で悪趣味とも言えそうなオブジェが沢山並んでいる。こんな店には見覚えがなく、そもそも店が減ってゆく中で新しく増えるような事など無い筈の商店街でよりにもよって、こんな目的不明な店があるとは思ってもみなかった。奥の椅子に悠然と座っていて、パイプを燻らせている店主と思われる人はしかし、こちらを気にする様子がない。



とりあえず眺めていた奇妙なオブジェに既視感があるという事から何故、過去の記憶が蘇ってきたのだろう。よくよく考えてみると、このオブジェに似たものをその過去と同じ頃にどこかで見た事があるような気がするのである。それは一言で言えば『腕』だった。だが普通の『腕』ではなく、人を不安にさせるような、不気味な曲線がある『腕』で、特に手から指にかけてのラインは、本物がそうあるべき曲線ではなくて微妙に歪み過ぎであるかと思えば、まっすぐ過ぎる部分があったりで、本当に安定していない。


「まるで妖怪の手みたいだ…」


「お、お兄さん中々見どころがあるね!」



小声で呟いたし、こちらを気にしていなかったから聞かれているとは思っていなかったが、渦巻き状の帽子を被っている店主が突然反応したので驚いてしまった。店主はいつの間にかこちらを見ていた。


「あ。失礼しました。その僕ちょっと美術はあんまり良く分からなかったので…」


「いや、合ってるよ。それ妖怪みたいなもんだから」


「え?これが妖怪なんですか?」


戸惑っているこちらをよそに、店主は得意げに説明し始めた。


「まあ正確には、妖怪になる前の混沌の一瞬を捉えたものだね。妖怪もアイデンティティーが必要なんだが、その妖怪が妖怪としてある前に、同一性もないような生成変化を繰り返している様っていうのがあるんだよ」


「はあ、アイデンティティーですか…。」


アイデンティティーといえば自分が中学校の頃に獲得した、少しひねくれたものを見方をする性格くらいしか知らないが、妖怪にもアイデンティティーがあるという意味が正直言ってちょっと分からない。


「お兄ちゃんは妖怪とか信じるタイプ?」


「え…?いや、分らないですね。無いと良いと思っていますけど…」


普通の人は虚構とか言いそうだが、昔から変な事ばかり考えている自分は、案外そういう事もあり得そうと思ってしまえる性格である。とはいえ、実際にそんなものを見た事はない。


「まあ、こっちのはもっと曖昧なものだからな。言ってしまえば「移ろう」のさ。うつろう」


「あの、これはどういうもの…つまり性質とかはどんなものなんですか?」


「性質なんてものはあってないようなものだな。どれも過渡的なものさ。ただ、この捉えた一瞬については『過去を呼び寄せる』という方向性をもっているかもな。というのも、これが崩れてはまた反復、或いは回帰するからでもある。以前これがあった時の事とセットになっているんだ。そういう意味では、アイデンティティーが一瞬だけ復活するような奇妙な『腕』さ」


「はあ…」


はっきり言って説明はチンプンカンプンだったが、『過去を呼び寄せる』という言葉だけがやたらマッチしているように思えた。実際、これはこんなものを見た事はないのにデジャ・ヴューだけがある。それを感じた時を思い出そうと、あんまり関係ない記憶が出てきてしまったのだろう。


「なんか思い出したかい?」


店主がトーンを落として静かに訊いてくる。


「あ、その青春時代の事をちょっとばかり…」



「そうか。まあ悪くはないな」



「どういう事ですか?」


「人によっては、まあ嫌な事を思い出す事もあるみたいだな。本当はこいつ…或いはこれは中立だからな。まあそういう意図があるというわけではないんだ。ただ人間の都合とは関係なく反復するから人によって違う印象になってしまう」


「なんだか厄介なんですね」



「ただ一つだけ言えるのは、それでも「確かにあった」という事を思い出せるという事は人間にとっては何らかの意味があると思う。たとえ悪い事でもな」



「そうかも知れませんね」



その時、何となくだがその中立の『腕』は自分にとっては何か頼もしいようなものに思えた。
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