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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

僕等のぼんくらリターンズ


我がN市に突如として現れたという『カンカラおじさん』。話題と言えば毎年同じような事しかないようなこの町に奇妙な噂が流れ始めたのは一か月ほど前の事だった。『カンカラおじさん』は今やシャッターが目立つようになった商店街の空き店舗を借りて、ろくに内装工事をしないまま、前衛的ともいえる自作美術作品を展示し始めた。県内では、被災地域で芸術家達が作品を遺すという活動をしているというニュースも流れたが、出自や経歴が謎の『カンカラおじさん』はどうやらそういう目的で展示をしているのではないらしい。


趣味で地元のネタ探しをやっている私はネット上でその信憑性も怪しい情報を入手して、当初こそ不気味さゆえに近づきたいとは思わなかったのだが、面白い話題も尽きかけてきた頃なので、その日だけはネットの動画アサリをやめて、普段通り人通りの少ないであろう商店街に出向く事にした。


ただ、調べられる事は調べておいた方が良いと思って、知り合いの知り合いのような筋からも情報を得て、私は事前に『カンカラおじさん』について断片的に知ることができた。そもそも『カンカラおじさん』というのは自分で名乗っている名前だという。誰かが「何でそういう名前にしたのですか?」と訊ねたところ、返ってきた答えはこうだ。


「そりゃなんとなくだ。意味はねぇよ」


そして、興味深い事だが『カンカラおじさん』の風貌は安定しないそうである。なんでも、


「世界は変わるんだから、カンカラおじさんだって同一性を保持する必要はないわな」


との理由である。『変わるんだから、その必要はない』というのはそうだが、別に変える必要もないような気がするのだが、感性が違うのだろうか。とにかく噂に聞いた『カンカラおじさん』がどのような格好をしているのかが少し楽しみだった。



店なのか展示なのかよく分からないその場所を訪れた時の第一印象は『なんじゃこりゃ』だった。前衛的なのは分かるけれども、とても一言で言い表せるような展示物ではなく、どれもバラバラで、つまり一貫性がなく、それでいて一つ一つが強烈な印象を与える。ラヴクラフトの小説を読んだ事があるのでそれに擬えると、オブジェは「冒涜的」な形をしているものばかりである。像を作っているのかと思いきや、独特の画風の絵も数枚飾ってある。その絵は一体何を描いたものなのか分らないが、馬のような猫のような特徴を備えてある『動物』あるいは『生物』に見える。


何とも言えず呆然としていると、奥で背もたれに掛けていた『カンカラおじさん』と思われる人物
が、


「どうだい。この辺には無いだろう?」


と矢庭に話しかけてきた。中には私しか居なかったので、私に話しかけてきたのだと分かったのだが、明後日の方向を向いていて、一向に顔を合わせてくれないので心配になった。おじさんは蒼いベレー帽を被り、あとはスーパーマリオのマリオと同じ格好をしていた。日本ではあれが配管工のスタイルだとは認識できなかったが、今の私は『カンカラおじさん』=『リアルマリオ』として印象付けられつつある。明後日の方向を見ていると言ったが、視線を追うと具体的には『元店』入り口の上部の壁に掛けてある時計を見ていたようである。


「この辺ではこういうの見た事ないですね」


私は、こういう美術品(?)がここ等へんでは見ないだろうという意味にといっていた。近くで市民が集まれるところで大体月替わりで芸術作品の展示会が行われているが、まさかこんな前衛的なものではなく、地元に少し所縁のある人のちゃんとした作品である。じゃあ『カンカラおじさん』の作品はちゃんとしていないのかという話にはなるが、少なくとも見ていて美しいとは思えない。


「そうじゃねぇよ」


「は?」


予想に反して「そうじゃない」と断言された私は何が違うのか分からずに戸惑ってしまった。おじさんは続ける。


「この辺でこういう『やつ』みかけないだろって事だよ」


そういって視線は時計にやりながらもある作品を指さすおじさん。


「こういうのって、この作品みたいなのですか?」


私は<何をあたり前の事を言っているのだろう>と思った。この作品みたいなのがこの辺どころかこの世界で見つかったら大事件である。馬と猫が奇妙に融合したような生き物が新種としてこの辺で見つかったら、色々心配される。開き直るつもりはないが、『例の事故』の影響があるとしてもこんな風には絶対ならないと命をかけて断言する。もっともそうではなくて、何か超自然的な事が起こってこんなものが発生したとしたら、その時は命をかけたのを撤回するつもりだが。とにかく命は大事だよね、と。


「あんたのような人には見えないかも知れないし、今は折からの妖怪ブームみたいだけど、その妖怪がカタチをなす前に捉えるとこんな風になるな」



「あ…(察し)」


括弧の中を言いたくなるほど察してしまった私は、一旦ここを退却する事にした。俗説を信じるわけではないが、『触らぬ神に祟りなし』の精神を重んじようとその時思った。


「まあ、あんたみたいな人に限って、こういうのに好かれるんだけどな」



逃げようと思った時に背後から掛けられた言葉に、私は最大限の後味の悪さを感じた。



(つづく…かも知れない)
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