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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

リアルファンタジー

つまり人生は続く。終ってもそこからが始まりなのである。というわけでめでたく最終回を迎えた漫画を本棚に押し込み、新たなストーリーに飲み込まれ始めたボク。最近のストーリーは複雑な設定が多い。ボクのリアルライフにこんな入り組んだ状況など訪れるはずもないのだが、未だに難無く世界に入り込んで行ける程度には柔軟性があり、血迷っているボクは、早々に登場した『伝説の剣』に憧れを抱き始める。こんな新興住宅地では、伝説も何もあったものではなく、精々伝説として地元でそこそこ名の知れたヤンキー紛いの人物が残した荒くれた逸話くらいが関の山で、そういう人々はリアルに生きているのかそれとも何かしら中二病とは違う設定を背負い込んで何かチキンレース的な事をしなければならない運命を背負っているようでもある。


ボクには運命なぞ見えやしない。しかし、ある日突然『伝説の剣』でも手に入れようものなら、必然的に何かに導かれるように日常が絶え間ない戦いの日々へと激変するのだろうか?考えてみると少し怖い気がするが、『伝説の剣』だけ所有して、何となくいつでも何でも出来そうな気分に浸るだけでも大分心理的に優位に立てそうである。


「エクスカリバー欲しいな…」


「売ってあげようか?」


脈略無く呟いたつもりだったが意外なレスポンスがあった。少し荒くれ者だった過去を持つ今はまっとうな仕事をしている友人の一言。


「え?あるの?」


思わず素で聞いてしまったけれど、冷静に考える能があれば「からかわれている」と判断しただろう。でも半分ファンタジーの頭になっているボクにはそんな器用な事は出来ない。多分。


「無いと言えば無いけど、あると言えばある。お前の欲しいエクスカリバーかどうかは分からないが、この世にはエクスカリバーと呼ばれる品はある」


「マジで!?」


「課金アイテムだけどな」


期待させておいて落とすやり口は相変わらずと言ったところか。


「そうだよな」


確かに主にスマホ所有者がプレミアやらレアだとか言って何かにつけて搾取されている現実世界ではデータだとしてもそれはエクスカリバーだと言って通用するかも知れない。分ってはいるけど夢のない現実逃避だなとは思う。自然とテンションの下がっているボクの様子を見た友人は、だが何か少しだけ真面目な顔をしてこう言った。


「何か勘違いしているみたいだけど、ゲームの話じゃないぞ…まあゲームと言えばゲームなんだが、現実にあるエクスカリバーの話をしているつもりだぞ」


「ん?どういうこと?」


分り辛い表現に思わず訊き返してしてしまう。


「お前はうぶだから知らないかも知れないが、俺の仕事もそれに関係している。最近始まった新しい娯楽なんだが、日本のとある場所で仮想のモンスターや武器を実体化させることに成功したんだ。何でもモンスターが実体化できるのはその場所から半径5キロまでで、公にはされていないんだが、その地域で今現実にモンスター狩りが行われている」



「…」



当然これにはボクも無言である。<何を荒唐無稽な話をしているんだろうこいつは>と思った。可哀想に、荒くれからは卒業できたものの今度は中二を患ってしまったのだろう。つくづく残念な頭である。



「あ、その目は信じてないな!」



「信じろっていう方が無理じゃないのか?」



「だってお前さっきエクスカリバー欲しいとか言ったじゃないか!」



「それは現実逃避で言ったんだよ。あるわけないだろ」



「現実から逃避しているのはお前だよ。いまや新しいビジネスとして既にいろいろ動き出してんだよ。具体的には政府のお偉いさんを買収して法案を通してもらおうとか、スポンサーを募ったり、映画とか企画したりだな」


「色々言いたい事はあるけど、とにかくそんな事がある筈がない。あったとしたら、なんでみんな知らないんだよ」


「堂々巡りになるが、俺の会社が秘密裏に開発した技術だからな、公にするのは準備が出来てからだから、今は信用できる人にのみ情報を教えている。いまはまだ『プレイヤー』、参加者にテストプレイしてもらっている段階だ。モンスターの強さとかアイテムの強さのバランスとかも調節しないと。何せ生命に関わるからな」


ボクはその辺りで、キレた。


「見損なったぞ!!真っ当な仕事に就いたと思って友人として喜んでいたのに、そういう詐欺に関わっているなんて思わなかった!!!」


すると、友人もキレた。


「なんだと!?こっちだって、お前なら信頼できるからこっそり教えてやろうと思ったのに、詐欺とは酷いんじゃないか?」



こうなると収拾がつかない。その後、散々お互いに罵り合って、この議論が不毛な事に気付いたボクは仕方なく譲歩した。


「じゃあ証拠を見せてみろよ」


譲歩はしたが、要するに信じる信じないを決めるのは直接見てからだと突きつけたに過ぎない。ただ、友人の嘘を言っているとは思えない迫力に少し押された部分はある。


「よし、言ったな。後悔させてやる。ちょっと待て」


すると彼はどこかに電話をし始めた。


「ああもしもし。『テストプレイヤー』が一人見つかったので今からそっち行きますわ。あ、はい。ええ。わかりました」


どうやら会社に電話しているようである。電話を切るとこちらを向いてニヤっと笑って、


「もう引き返せないぞ。喜べ特別にエクスカリバーを使わせてやる」


と言った。




☆☆☆☆☆




まさかこんなど田舎の何でもない場所がファンタジーなみの戦地と化しているとは思っても見なかった。中世の世界観を表現したと思われる城や、砦、森などは、全部仮想のデータを実体化させただけのものらしい。つまり破壊しても『器物損壊』にはならない。ただし実体化した剣や銃…この聖剣エクスカリバーを所有する事は銃刀法違反になりそうだが、実体化領域を出たとたん消滅するし、『直接人に物理的な攻撃が出来ない』ものとしてデータが作成されているから、厳密には武器ではない。


「色々考えられてるなーとは思うけど…」


「どうした、吃驚したか?」


得意げに立っている友人は全身をアーマーで固めている。何でもこれはチート装備で、『モンスターの攻撃を全て無力化する』という効果を持っているらしい。そう、こういう装備をしなければならないような状況にボクらはいる。


「このモンスターの攻撃はさ、ボクには当たるんだよね?」


「そうだよ。中ボスくらいだけどね」


「当たると痛いよね」


「そうだね、死にはしないけど普通に殴られるくらいの痛みはあるな」


「…」


目の前にいる凶悪そうな顔をした緑色のモンスターはやはりトロールだろうか。巨漢でまがまがしい大きな棍棒を握りしめて『早くかかって来い』と言わんばかりの顔でボクを見ている。


「…いや死ぬだろ。下手したら」


冷静なつっこみをしたつもりだったが、友人は笑っている。


「リアルを追求しないと面白くないからな、大丈夫だ、参加者のレベルに合わせた強さになってるから、ああ見えて一般成人男性なみの強さだ」


「つまり…?」


「合法的なリアルファイトだな。昔の俺ならあんなの余裕で〆れる」



「…」



結果的にボクはトロールとタイマンを張った。エクスカリバーは調整不足の為か途中から使用不能になり、トロールの棍棒も途中で折れて最後は素手と素手の闘いになった。闘いながら、


<戦いって無意味だな>


と思った。ちなみにボクは、トロールに降参した。
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