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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

応用

近所の小学生が言った「市民プール」という懐かしい響きでいつかの夏がフラッシュバックしたその日、これでもかと言わんばかりに脳髄を酷使して極限の熱を持った頭を左手で抱えながらで作業部屋でうちわを扇いでいた。訳あってちょっとした地元の夏祭りという風情のイベントの手伝いを頼まれて当日の余興にと何かアイディアがないか知恵を振り絞ってみるものの、何分そういう経験に疎いゆえ貧弱なイメージしか湧いてこない。



世間は「夏休み」と「通常営業」のせめぎ合いでどこかソワソワしつつもいつも通りを心掛けなければならないようなそんな8月に突入している。数年後にせまった自国開催のオリンピックの莫大な費用と労力に辟易しつつある自分としては、低予算でささやかに楽しめるこういった地元のイベントに微力ながら協力できるものならと安請け合いしたのは決して無謀ではなかったと信じたい。平素、「気持ちがあれば何とか出来る」と我が身に言い聞かせているその理論というか理想が通用するかどうかが試されるようなシチュエーションで、しかしながらここまで苦戦するとは思ってもみなかった。



蝉の声に意識を奪われつつもとりあえず「ミニコント」という路線で考えることに決め、では何のネタが良いのか、どのくらいの人数で演じるのかというところからが思いのほか難航している。既にアラサーの余裕さえも漂いはじめた年齢で、古すぎるネタではいけないけれど会場に訪れるやや「老」に偏った老若男女に対して少しは笑いが起るように作ってゆくとするならどういった要素が必要か…何てことを理屈で考え始めると自分はそういう分野についで手練手管と呼べるようなものは持ち合わせていない事に早々に気付く。



「悶々としててもダメだな…こりゃ」



とりあえずタブレットのアプリを開きながら思いつく限りのメモを取っていたのだが、益々勢いを増してきた蝉の大音声に既に気を取られ始めている事に気付く。こういう時は無難な選択だけれど少し気晴らしが必要だなと思った。折よく「ポケ〇ンGO」のレイドバトルイベント中で、鄙びた部類のこの町のジムにも「伝説のボス」が出現しているという情報があって、休日やちょっと開いた時間にぼちぼちユーザーが集合しているという話である。自分も休みの日くらいはちょっとばかりやる気が湧いてきて、車で行ける範囲の場所なら周ってきていたりする。今もちょうどレイドバトルがやってそうな時間帯だし、車でひとっ走りして様子を見て来ようかなと思う。





そうして移動中、狭い道の対向車に意識を向けながらも自分の心が結構「ワクワク」しているという事に気付く。


<身体は大人になっても、どっかで子供なんだよな…>


微妙な感覚をそんな風に納得させつつ、また別な意識で「夏祭り」というのならやっぱりそういう気持ちが必要なのではないかと思ったりする。大抵の事は自分もどこかで楽しんでいなけりゃ身が持たない、的な事をそこそこ経験していると『気持ち』の重要性に嫌でも気付かされる。同世代の連中も「ポケモンGOさまさま」な部分があるのかも知れない。



ある意味昔より来るようになったかも知れない駅前の駐車場に車を停め、辺りを見回してみると暑さにも関わらず出歩いている人が多い印象である。そりゃあ平日だし用事のある人が居るだろうし、ジャージ姿の学生なんかは夏休みだろうが部活に行かなきゃならんという定めがあるわけだからして必然的に駅というのは人が集まるものだけれど、本当に僅かにだが自分と似たような気持ちでやってくる人もいるんじゃないかという雰囲気である。


「う~ん…こいつは一人では狩れなさそうだな…」


スマホの画面に表示されているジム…に表示されている「伝説」ではないものの比較的強敵のボスの能力を確認して急激に意識が萎えてくるのを感じる。田舎というハンディにも挫けずに続けてきたとしても、人が集まらない限りはどうにもならない壁。それはまるでこの町の何かを象徴しているような「あるある」のようで余計に気持ちが削がれる。



「まあ、適当に周ってアイテム回収するか」



と持ち前の『対応力』で方針を変え、アイテム集めに切り替え用とした時だった。



「あ…」


今しがた駅の正面に現われた二人の比較的若い男性がお互いのスマホを確認しながら何か話し合うようにしている。<このパターンは十中八九「レイド」だな>と思って、どうせ今日はこのままだと使用できないであろう「パス」を使ってボスに乗り込んでみる。案の定、二人はボスに挑もうとしていて、『合法的』に割り込むような形で自分も参戦する格好になった。おそらくは彼等のスマホに表示されたユーザーを確認して微妙に意識されているだろうけれど、世代もちょっとずれてるし敢えて接触し過ぎないように気を遣いながらバトルの時間を待つ。



<なんつーか、気恥ずかしいのは何でだろうか…>



こういう恥ずかしさは電車の中で乗り合わせた場合と似ている。バトル的にも情けない戦いは出来ないし、かと言って人数が多い方が圧倒的に有利なのは事実だし、彼等にしてもいいタイミングだったと思っているはず。などなどいろいろ自分に言い聞かせるようにしてバトルが始まり、地味に2体ほど倒されてしまったけれど何とか狩ることが出来た。



「よっし!」


ほんとうに小さくだがガッツポーズをして、ささやかな気持ちで二人の見知らぬ男性の方を向いて軽く礼をする。するとあちらの方もにこやかにほほ笑みつつ、目を合わせて少し頷いてくれる。これは確かにこのゲームの『醍醐味だ』とその時ほど実感した事はないかも知れない。事実上、たまに会う友人とか職場の同志とガキのようなノリで挑んでみることはあったけれど、こういう風に世代も違う人が「居合わせた」という理由だけでタッグを組むというのは自分にとっては初体験だった。



というか、今思うとそんな自分がよく「伝説」という情報だけでノコノコとやってきたなと感心する。仮に出現したとしても、ほぼノープランだったと思う。まあ何にしても結果オーライで倒した後に何とかポケモンもゲットできた。日常では味わえないちょっとした高揚感と供に、車内に戻って一息つく。


「あ…そっか、ベタかもしんないけどコントのネタこれでいいんじゃないかな…」



そんな事に思い至ったのも間もなくだった。



☆☆☆☆




イベント当日「田舎あるある」ネタを折り込んで、同世代、少し上の世代にもありがちなおっさんの悲哀と、若人のまばゆさをテーマにしたミニコントはまあまあ好評だった。特にダメダメなおっさんが、偶然そこに居合わせたという理由で早々に「夏が終ってしまった」高校球児と一緒に花火を見て慰め合う展開が視聴者の胸を打ったらしく、



「君、実際にああいう経験をしたの?」


と後で訊いてくる人もいた。それに対して、


「似たような経験をしたんです」


という答えがまさかポケモンが念頭にあるとはだれも思わないだろう。まあ「応用」といえるだろう。
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