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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

フレミングに宛てて⑧

ゆったりと歩き始めた小林さんの後を、歩幅を合わせるようについてゆく僕。あんまり近づき過ぎるのも変かなと思ったので少し間を空けて僅かにスマホの画面を意識するような感じで50メートル位歩いたところで小林さんが、


「面白いですか?」


とこちらを振り返って訊ねてきました。


「え…?」


一瞬何の事か分らなかったのですが、「それ!」とスマホを指さす仕草をしたのでポケ〇ンの事だと気付いて、


「結構面白いですよ。ここらへんは全然モンスターが居ないようですけど、タマゴが手に入ったので孵化させるために歩くので丁度良いです」


と軽く説明すると「なるほど~」と感心した様子で、


「私もやってみた方が良いんでしょうか?」


と訊ねられました。どう答えたらいいのか分らなかったのですが、


「グラフィックとか綺麗なので、モンスターを眺めてるだけでも結構楽しいですね」


という具合に勧めてみました。彼女はそれで微笑んでくれたので、良さを伝えられたかなと思います。それから広い田んぼと田んぼに挟まれた道路をそのまままっすぐ進み畦道の方に曲がり、そこを通って川が流れている堤防沿いの道に至りました。その間、漠然と小林さんと近況を確認し合ったりしていましたが、自然とイラストの話は盛り上がりました。日頃自分の作品のモチベーションの維持には悩む事があるので、ジャンルは違いますがまた作品に向き合いたくなります。



「で、さっき私が何をしてたかっていうと、描く為にしてたことなんです」


「描く為?」



ややざっくりと説明されましたが何の事なのか良く分からず思わずオウム返しになってしまいます。「ふふっ」と笑うように、再びカメラを向けて目の前にある川の向こうの写真を何枚も念入りに撮ってゆく小林さん。おそらくイラストを描く為の資料なんだろうと推測されましたが、どうもごくごく普通の景色なのでそれが描く為に必要なのかというといまいちピンと来ないのが本音でした。



「描く為の技術は数えきれないほどあります」



小林さんは戸惑う僕を意識しているのかいないのか、坦々と話し始めました。


「私も初めは上手くなりたくって好きな人の絵を真似したり、オリジナリティーを出そうとしたり、色々やってみました」


「ええ」


作曲にも言える事なので自然と相槌を打つ僕。


「でも、結局『表現』なんだって事なんです」


「表現」


するとちょっと困ったような表情でこちらを見て、


「アート…って言葉もそうですけど、自分の中にある『何か』をそれこそカタチだったり色にして、そこに『現す』っていう感じですね」


「音とかにも…そうですよね」


「ええ。多分手段とか方法が違うだけで、自分の中にあるものを表現するっていうとは同じだって最近では思っててそれを意識するようになった時に、『じゃあ私の中にあるのって何だろう?』って思いはじめたんです」


「なるほど…」


非常に分かり易い説明でした。彼女に比べると僕はまだそこまではっきり意識はしていませんが、確かに自分のイメージしている音を作れるようになりたいというのも本質的には同じことなのだとその時思いました。


「でも『自分の中に』あるのかなって何だか…自信が無くなってきて。結局私はどういう世界を表現したいのか、前の環境では見えにくくなったんですよね」


「何を表現したいか…ですか。そう言われると難しいですね」


「そんな時でした」


その時心地よい一陣の風が川の向こうの方から吹いてきました。彼女はそれに流れてゆく髪を整えながら、


「ネットでどこかで見た事のあるような懐かしい風景の中で活き活きと動いている子供の絵を見たんです」


「へえ~」


「私はどこかでそういう光景を見ていたなって思ったんですけど、明らかに都会じゃないんですよね。それで子供の頃のアルバムを捲ってみた時に気付いたんです。そう「おじいちゃん」の家…つまりこの町で小さい頃夏休みに私の知らない地元の誰かが、そのイラストの中の子みたいに私の目の前を走っていたなって」


僕はこの時、小林さんが伝えようとしている事がだんだん分ってきたように思います。


「そうか、それで…」


「ええ、気付いたらおじいちゃん…祖父に『ちょっとそっち行ってみていい?』って電話してました。おじいちゃんも喜んで、『おいでおいで』って。それが去年の事です」



「そういう事があったんだね。確かにここら辺は本当に景色だけは凄いからね、あっちに山もあるし」


と僕は地元の象徴とも言える町の西側の向こうに聳える山を指さしました。彼女は頷きながら、


「今の時期なんかは本当にキラキラしてて、夕陽も綺麗で。私の中ではときどき物語のような世界に見えるんです」


とキラキラした表情でそう語りました。


「凄いね…地元で当たり前に見てたからなんか実感がないけど、でも確かにそう言われると…」


僕にはその時彼女が見えている世界が、彼女の表現したイラストを通して見えているような気がしました。確かに彼女の作品は背景がきっちり描き込まれていたように感じます。だからこそ人物も浮き立つというか。こんな何でもない田舎の風景ですが例えば「川のせせらぎ」とか、そこに反射する光とか、今となっては胸を締め付けるような子供の頃の思い出とか、確かに自分が大切にしているものがあるんだなって思えました。


「僕も地元民として、こういうところからインスピレーションを受けて表現したらいいんだろうか?」


と自分でも良く分からないような事を口走ってみてちょっと後悔していると、


「鈴木さんも何か創作とかやってみたらいいですよ」


そんな風に言われてしまいました。


「えっと…実は」


と僕はここで密かにDTMでインストゥルメンタルの曲を作っているという事を小林さんにカミングアウト。ちょっとだけ恥ずかしい気もしましたが、その次の瞬間小林さんは「えっ」という表情になって、


「それだったら私にも聴かせて下さいよ!」


とかなりぐいぐいと迫られてしまいました。こちらは作品を見せてもらえているのもあって「まだ駆け出しでレベルが違いますから…」と言い訳をしようとしましたが断りにくく、観念して「後でファイルを送ります」と約束。


「メールでパソコンに送ってもらえるなら、それじゃあアドレス交換しなきゃですね」


そう言われて僕自身ちょっと変なテンションでアドレスを交換しました。で、念のためにという事で携帯の番号も交換したりするという展開になると<こういうのは意識した方が良いのだろうか?>とかよく分からない事を考えそうになって「う~ん」と呻っていると小林さんが一言。


「お互い頑張りましょう!!」


どうやら僕の創作活動は少し新しい段階にさしかかっているようでした。
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二本松のこと、競馬のこと、これから手探りで何かを
やってゆこうと思っています。




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