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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

麗しき人の夢 ⑰

待ちわびた時とはいえ、実際に目の当たりにしてみると感慨深いものがある。眼前に広がるのは見事な桜だ。それも一本だけではなく何本も立ち並び、辺りは観光客で大分賑わっている。日曜日、私はN市の観光名所である城跡の公園に立ち寄り桜を眺めていた。今年は開花が遅れていたようだけれど、いざ開いてしまうと一斉に満開になってしまったような観がある。


<なんだか勿体ないよなぁ>


満開になったということは、少しすれば散ってしまうのも自明な理。風流を解す人なら、儚いものの美しさを愛でるという心境になれるのかも知れないけれど、私はと言えば今しばらくこの時間が続いてくれると素直に嬉しいと思ってしまうのだ。



そういえば儚いという字は「人」に「夢」と書く、というような事を一年前にも考えていたような気がする。一つ歳をとったからなのか「夢」という字が入っている事の理由がより実感されている感じと言えばそうかも知れない。『儚い栄華』とでもいうべき時空の間を、あれもこれもと目移りしてしまいながらゆったり歩いていると、まさに夢の中にいるような気分になってくる。


「お母さん、あれ!!」


地元なのかそうではないのか分らないけれど、子供が母親の手を引っ張って一等咲き誇っている豪快な桜を指さしている姿を見掛けた。自分にもあんな時期があったのだろうか、と少し思い出してみたが桜について云うなら歳を取るほどに惹かれてゆくからか、この凄さも理解できていなかったように思える。


<当たり前にあるもんだと思ってたんだろうな…>



大人になって、世の中にあるものが「当たり前」でありながらそんなに容易い事ばかりじゃないという事に気付いたのはどの辺りだったろうか。割と学生時代のバイトの時に、提供する側になってみるという程楽じゃないと実感した辺りからだったかもしれない。桜にしたって、手入れだとか寿命だとか年月だとか、色んな要素があって、今こうして花開いている景色を本当に僅かな時間だけ見ることが出来る。もちろん、そんなことは当たり前じゃないかと言ってしまえばそれまでなのだけれど、逆に「稀なもの」には人は惹かれて目を奪われてしまうというのも自然だろうというある種の「当たり前」が存在する。




ただ、そんなややこしい事を考えなくとも見ただけでそれは分かる。春の代名詞のようなこの白みがかった薄いピンクの花びらに包まれていると、独特なムードが漂い始める。妖しくも美しいその世界観に引きずられて古の人が歌を詠みたくなる気持ちはいやという程分かる。



興が乗ってきたので、広場の方から上に登ってゆく道を進む。地元では「さくらウォーク」という催しでその先にある遊歩道を桜を愛でながら歩くというものがあり、例年雨が降ってしまう事があるという話だ。今その遊歩道を静かに歩き始めると、ここも物凄い数の桜の木が立ち並んでいる。思わずスマホを向けて何枚か写真を撮ってみるのだが、どうもこの空間の素晴らしさというのは上手く映せていないような気がする。



<ああ…なんかこの雰囲気で作品でも書いてみたいなぁ…>



自然と心の中に湧き起る気持ちを意識しつつ、なんとか言葉で表現しようとしていた。


酒も飲んでいないのに少し夢見心地になりながら家に戻ってPCに向かう。そうするとマロが近寄ってきて、こちらの方をじっと見つめている。親ばかの気からなのだろうか『マロにも見せてやりたいなぁ』と思ったりしたが、今書いている作品の猫のように人間に変身できるなら何かを思うのかも知れないがあんまり感動はしないのだろうか。いつか作品世界で桜を見るシーンを取り入れることに決める。



その時、スマホに通知が入った。ツイッターのDMでK君からのメッセージである。


『時間ができたから、N市に来ているよ』


添えられた写真には桜が映っている。なんと、そこは先ほど私が居た城跡の公園であった。


『俺もついさっきまでそこに居たよ…ああ、惜しいなぁ…』


『そうだったのか。もうちょっと早く来てれば…』


そんなやり取りをしつつも、何となくそれが今は確かにK君が県内に住んでいるという事の証のように思えて私は妙に嬉しかった。


『もし時間あったら、一度みんなで集まりたいよな』



K君が言葉にした想いは私にもあったし、


『時間と場所による』


と返信したO君もそうだろう。こうしてネットでやり取りしていても話したい事は山ほどあるような気もする。でも実際に集まってみると、内容があるんだか無いんだか分らない話を延々としているのかも知れない。ただ、それが何より楽しい事だったりするのだと、いつの頃からか気付いている。



会ったらまたお互いに『麗しき夢語り』でもして、次に会う時を待ちわびていたいなと私は思い続けているのかも知れない。

20170418153345a8b.jpg


(完)
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