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スローペースで、二人で出来る事を模索しながら。二本松、競馬、などなど。

フレミングに宛てて ⑬

8月になっていよいよ逃げ場のない暑さにウンザリし始める頃エアコンの効いた居間でテレビを見ていますと、そこに映し出される海の光景にぼんやりとした気持ちで憧れをもってしまいます。学生時代もこれと言って青春を謳歌した方のグループでもなければ、勉強で見返してやろうという気概もそれほどない人間だったせいか、キラキラと輝く浜辺もそこに居る人の表情もどこか異世界の事のように思われてきて、少し溜息をつきそうになります。


自分の今の状況を振り返る度に「とにかく今は創作を続けるのだ!」と誰からでもなく言われているような気がして、実際ついこの間一応の自信作を某投稿サイトにアップロードしてみた結果、再生数はそこそこであるものの地味にダウンロードが増えていてほんの少しですが「才能」のような言葉も意識してしまいます。その出来事をメールで『虹野スミレさん』こと小林春香さんに報告すると、


『凄いね!やっぱり作品を評価してもらえると俄然意欲が湧いてくるよね。私もちょっとした仕事の依頼が入って今必死に描いてるところ』


と返信がありました。青春とは少し違いますが、こういうやり取りをしているとそれはそれで楽しいですし<間違ってないのかもな>と思えたりします。ただ、今取りかかっている作品である「フレミングに宛てて」という作品については、ちょっと全体がまだ見えていないので絶賛「生みの苦しみ」を味わっているところで、作品ができた時には最早そういう風に展開させるしかなかったかもな、という感覚があるのに現時点ではメロディーが繋がりそうで繋がらないというもどかしさがあります。



テレビも見飽きてきたし、そろそろ気晴らしにネットで作品を漁ってみようかなという気分になりました。某動画サイトではマイナーで再生数も二桁くらいが関の山のジャンルですが、若干「売名」のようなかたちで凄まじいテクニックを持った人が「ネタ」のような作品を作って賑わせているのを見ます。苦笑いしつつも、音作りからコード進行に至るまで素晴らしいとしか言いようがないので「ネタ要素」は見逃す事にして作品を味わってみます。この日もそれこそ1万再生位行きそうな「アレンジ」が投稿されていて『明らかに通のもの』と分かるコメントを読みながら、


<度胸のある人はこういう事も出来るんだよなぁ>


と感心していました。ネット依存気味なのに、ネットでのコミュニケーションに若干苦手意識のある僕としては昔でいうところの「ROM」なのでしょうが、いつかは堂々と作品をアップロードできる日が来るのでしょうか?



数作品を聴いてみて自分の意欲が高まったなと感じた時、スマホに電話が。名前を見て慌てて出ると、


「あ、翔?俺だけど、今大丈夫?」


それは久々に聞いた声でした。この前メールを送った友人の一人、高宮くんです。


「うん大丈夫。もしかしてメールの件で何かあった?」


「まあ、そんなところなんだけど、実は昨日俺帰省したんだよ。そんでさ、地元の三中の人に会って高橋の事話してこようと思ったんだ」


「あ、そうだったのか。なんだか悪いね…」


「いや、丁度帰ってくる予定だったからいいんだけどさ。そんで翔にお願いっていうか今後の事を色々考えて、その高橋の友達っていう人に会わせてもらえないかなって思ったんだよ。その時直接連絡先を教えてもらった方が何かと都合が良いしな」


かなり積極的に話してくれる高宮くんですが、そういえば高校時代も引っ込み思案になりがちな僕をクラスで上手くやってゆけるように援護してくれていた世話焼きの人であったことを思い出しました。ただ今回の場合は、僕が間に入るよりもどちらかというと直接菅野くんと面識があった方が都合が良い事は明らかでしたので、そう考えたのかも知れません。


「ああ、そうしてくれるなら有難いよ。じゃあ最初は俺もついてゆくから3人で合流できそうなところ…というと…」


地元で会うなら場所は限られているのですが、


「まあファミレスって…いうと一つだな」


とあっさり決定。


「うん。分かった。いつ頃がいいかな?」


「出来れば早い方が良いな。相手の事情もあるだろうからまずそっち訊いてみてもらえるかな?」


「OK」


「じゃあ。あとで折り返し頼む」


という風なやり取りになりました。スマホの表示で時間を確かめると3時頃だったのですが、この時間なら大丈夫だろうと思い、すぐに菅野くんに電話します。案の定すぐに出てくれて、



「あ、もしもし?鈴木さん、何かありました?」


といつもと変わらない様子でやり取りが始まります。じっくりと用件を伝えたところ、


「ありがとうございます。俺なら明日とかでも大丈夫なので伝えてください。」


と即決してくれたようです。僕も次の日は夕方からのシフトだったので都合がよく、色々勘案した結果午前中にファミレスに集合するという事で話をつけ、折り返し高宮くんに折り返し連絡すると「それで大丈夫」との事。



意図せず旧友と会う予定ができたので少しばかり嬉しい気持ちがあります。勿論主目的があるので浮かれているわけにはゆきませんが人と会う事によって生じる刺激も当然あって、自然と何かを期待してしまうわけです。と…それはいいのですが、ようやく意欲が高まったところでの連絡だったので、


「なんだか…ね…」


と呟いてしまいたくなる午後でした。
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フレミングに宛てて ⑫

『高橋雅仁?ああ、知ってるかも。クラスは同じじゃなかったけど、確か高校K市の方に行ってたような気がするな。合ってる?』


僕は高校時代の友人の一人に連絡を取ってみました。その人も三中出身でしたが三年間同じクラスだったので気軽に話せる仲です。三中出身の『高橋雅仁』という名前の人を知っているか?という切り出しでメッセージを送ってみたのですが、すぐに返信がありました。なので思い切って正直に、


『ああ、そうだよ。最近知り合った人の友達らしくて、消息不明…と言っても恐らくは家出らしいんだけど、その知り合いが心配してるんだよ。どういう人だったか情報が欲しかったんだよ』


と告げました。


『家出かよ…マジか…』


僕の友人、高宮くんは文面にショックを受けた様子でしたが、


『俺もそんなに仲が良いっていうわけじゃないけど、結構中学の時に色々と目立ってたしなぁ。同級生に連絡したらみんなびっくりすると思うな』


という返信の後に「雅仁」くんについて色々な事を教えてくれました。もともと高宮くんは小林さんの住む地域に住んでいて、ご存じのように彼が通っていた小学校はそこから見えるところにあります。ですが「雅仁」くんはどちらかというと僕の家から近い側の学校に通っていたらしく、家も市内寄りに位置しているとの事。4つの小学校から進学した生徒が集まる三中で同学年になった「雅仁」くんと高宮くん。クラスが違ったため接点はそれほど無いという事でしたがクラス合同で行われる体育の時間は一緒だったそうで、少し話した事もあるそう。運動が出来て、そこそこ頭も良かったらしく高校はK市の私立の高校に進学したとの事。菅野くんがN大学の工学部に在学しているという事を考えれば二人はそこで知り合ったというのも辻褄が合います。菅野くんがN大に入学する一方で、「雅仁」くんは違う進路を選んだ…。



ここまで整理すると、「雅仁」くんに会ったわけではありませんがどことなく人となりが窺い知れるような気がします。菅野くんが私立の高校から同じ名前の大学に入った事もある意味「なるほどな」と思いましたが、そういう進路があり得たにも関わらず進学しなかった事を鑑みるに、やはりその頃からラッパーという「夢」があったのではないでしょうか。



高宮くんは「雅仁」くんの事について中学の情報網…『同窓会』の情報網を利用して「何か出来ないかな」とも言っていました。何かが具体的には何なのかは分かりませんが、確かに僕も出席した年明けの成人式に「雅仁」くんも参加していたとするなら、そこで会った同級生に何か話していたかもしれないなと思いました。これは盲点でした。高宮くんの他にも高校時代の三中出身者の友人がいますが、忙しいのか返信はありませんでした。



「まあ東京の大学に行ってるっていうしなぁ…」



などと独りごちてしまう僕。僕が通っていた市内の進学校は進学校といえど偏差値が高い人はF市に通っていましたし、その友人もかなり頭が良かったのですが「近いから」という理由で僕と同じ高校を選んだちょっと変わり者の友人でした。


「『東京』…かぁ…」



様々な想いがこみ上げてくる地名です。憧れはしたものの自分には勇気がなく、そもそも実力について自信のない僕はどちらかというと漠然とした「怖さ」が先に出てきます。ただ、今回はちょっと違う事が浮かんできます。


<東京に居るなら、「雅仁」くんも探してもらえないかな…?>



…いや…何か引っ掛かる。というか常識的に考えれば、家出をして住む場所を探すにしてもやはり最初は「東京の知り合い」を探すんじゃないだろうか…。この場合だと中学校の友達とか。念のためそれを高宮くんに伝えてみると、


『そういう事も考えられるな…。中学の時仲の良かった奴で上京してる人だと限定できるけど…ああそういえば『佐藤直』とも仲良かったような気がするけど』



という返事。『佐藤直(ただし)』くんがまさにその変わり者の友人なのですが、そんなに単純な話だろうかと思うところもないというか、偶然僕の知り合いだったなんてことはどうも考えにくい気がしたので、もう少し慎重に調べてゆくのがいいのかなと思いました。菅野くんにこの日分かった事を報告すると、


『ありがとうございます!!三中出身の人に協力してもらえば何とかなるかも知れませんね。希望が見えてきました』


と明るい返事。なんとなく菅野くんと高宮くんの間の連絡係のようにはなっているのが不思議だなと思いつつも、協力者が得られたという事は僕としても心強さがあります。

フレミングに宛てて⑪

例のゲームをインストールしてから数日が過ぎると作業に行き詰った時には近くを散歩するのが習慣になってきたように感じます。用事がないとついつい長時間没頭してしまう僕ですが、少し涼んできた夕方頃に道を歩いているとふっと頭の中にそれまで考えても居なかったメロディーが浮かぶような事があって、鼻歌ですが忘れないうちにスマホで録音したりという経験もあって、もしかするとそういう創作の方法もあるんじゃないかと今さらのながら気付いていました。ネットで調べてみても似たような経験をしている人は多いらしく、スマホの録音機能は非常に重宝しているとの事。



その日の夕方も家まであともう少しというところで咄嗟に浮かんだメロディーを忘れないようスマホに吹き込みながら玄関まで辿り着くと、丁度その時間に仕事から帰宅していた母に変な目で見られてしまいました。


「最近あんたよく外出してるね」


「散歩を始めたんだよ。この時間の方が涼しいから」


「ちょっと日焼けしたんじゃない?」


というようなやり取りを少しして苦笑いしながら自室に行こうとすると母が最後に、


「お父さん明日帰ってくるけど、私とお父さん明日出掛けるから留守番よろしくね」


と言いました。単身赴任で月末だけ家に帰ってくる父ですが、その分なるべく帰って来た時には母と出掛けるようにしています。大抵は県内を車で移動して美味しいものを食べてくるという位なのですが、「ポケ〇ン」の事があると微妙に自分もついて行きたいなと思ったり。ただ、今は先ほど浮かんだメロディーを早く入力したかったので、部屋に入るなりPCをスリープから復帰させます。



その作業が一段落したところで念のためPCのメールをチェックすると『From 虹野スミレ』という送信者からのメールが一通届いている事が分かりました。これは小林さんのネットでのハンドルネームですが内容は、


『どうも小林です。翔さん(って呼ばせてもらうね)から送られてきた曲聴いてみました。こういうジャンルの音楽は私素人なんだけど、でもなんか聴いてて気持ち良かった。優しい感じがしたっていう言い方が正しいのかな。次の曲が出来たらまた送って欲しいな』


というものでした。メールの文面で見ると少し雰囲気が違うのが興味深いなと思いました。「優しい感じがした」という感想については、そういう風に具体的な言葉で言われたのも初めてだったので、正直なるほどなという感じです。メールが届いてからそれほど時間が立っていないようだったのですぐに返信を考えます。普段から丁寧語口調の僕ですが、小林さんは名前で呼んでくれていますしあまり余所余所しくならないように敢えてこちらも「春香さん」と書く事にしました。



メールを送信したところで夕飯の時間になったようなのでリビングに行きますと母に、


「なんか良い事あったの?機嫌良さそうね」


と訊ねられました。<そんなに態度に出てたのかな>と思うのと嬉しいのは確かだよなと思う気持ちで、


「うん。まあ良い事あったよ」


と返事しておきました。ただ小林さんとの一連の出来事を説明するには出会いのきっかけとなった菅野くんとの出会いも説明しなければならないし説明したらしたで色々面倒な事になりそうだなと思い、問題がある程度整理されるまでは曖昧にぼかしておくことにしました。



夕食の間父の代わりにというか母の仕事上の愚痴をちょっと聞いたりしつつ、当たり障りのない世間話をしていると母がふと何かを思いだしたかのように、


「そういえば…」


と切り出しました。


「お母さんの仕事場で一緒に仕事している人なんだけど、その人の息子さん、あんたと同じくらいの歳らしいんだけど、家出したとかで大変だそうよ」


『家出』という言葉で僕は一瞬絶句しかけました。もしかしてと思いつつも、


「何処の人?」


と冷静を装って訊ねてみると、


「息子さんは三中出身だって言ってたから、知らないと思うんだけど家からそんなに離れてないよ。その人高橋さんっていうの」


という返事。食後、菅野くんに確認してみて分かった事ですが彼の友人の「雅仁くん」も出身もやはり三中らしく、苗字も「高橋」で一致している事からどうやら同一人物である事が分かりました。


『凄い偶然ですね…』



と菅野くんが洩らしてしまうほど思わぬところからの繋がりが出てきたのですが、たとえそうだとしても現状には何も変化がないのがもどかしいなと思いました。ただ、同い年で三中出身者だという事なら僕の高校時代の知り合いにも連絡が取れる人が二人ほど居ますし、その人に「雅仁くん」の事について訊いてみるのも良いのかもなと思いました。

フレミングに宛てて⑩

コンビニの朝のシフトはなかなかハードな時間でもあります。コードをスキャンして検品、陳列をしながら次々にレジに並ぶお客さんを待たせないようにさっと持ち場に戻って会計をしているだけでも時々<ちょっとした『修羅場』なんじゃないか>と思う事があって、こういう時ほどベテランの落ち着きを見倣いたいなと感じます。既に見知った人になってしまっている常連さんとか、逆に地元の人ではない雰囲気の人とか、ここに居るだけでも今日もしっかり世界は動いているなという印象を抱いたり。決してこの仕事だけで将来生きてゆくつもりはないものの、ここで感じられる事も活きてくる時が来るのかな、と前向きに考えながら仕事を続けます。



正午でベテランの加藤さんに引き継いでレジの裏で「お疲れさまでした」と声を掛けながら出て行こうとすると、


「ああ、鈴木さん。ちょっと待って、これあげる」


と何かを手渡しされました。それはどうやらコンビニの新商品の試供品らしく、バイトの人に漏れなく渡す事になっているようになっているようです。今回は『菓子パン』のようですが、あまり食べた事のない種類ですが、まあ今日食べてみるのもいいかなと思いました。加藤さんが「これあげる」と言った時の表情もまあ独特で、いかにも「なんかねぇ~」という微妙さが滲んでいました。『菓子パン』も好きな人は好きですが、嫌いな人は食べないですし。



帰宅して適当に家にあったものとそのパンを食べながら、ぼちぼち作業を始めようかなという頃、スマホがゆるやかに振動しました。メールだなと思って確認してみると、


『そうですね。確かに「フリースタイルっていうのが流行で」って雅仁に教えてもらった記憶があります。場合によったら『聖地』まで行ってみて、直接色んな人に尋ねて回るのも早いかもしれないですね』


という文面。<ああ、そういえば昨日そういう事をメールしたな>と思い出し、送り主である菅野くんに何か返事してみようと考えた時、ふと僕は思いました。


「こういう場合って、もしそこに行くとしたら着いて行った方がいいんだろうか?」


『聖地』まで行くとなると旅費なども馬鹿にならないですし、時間の都合を付けなければならなくなります。そもそも論だとひょんなことから人探しを手伝っているに過ぎない状況なので、自分の出来る範囲で手伝っていればもうそれだけで十分なのですが、菅野くんに会った時の始めの印象から抱いている「危さ」はどうも放っておくことは出来ない類で、まあそれを言ったら自分もしっかりしている方の人間ではないですけど、なるべく穏便に解決すればいいなと思っているのは確かです。僕はそこで一応菅野くんにこう確かめてみました。


『僕もそこに行った方がいいんでしょうか?』


ダイレクトに訊きすぎたかなと思う間もなく返信が来て、


『俺もさすがにそこまではお願いできないです。ただ、鈴木さんに出来ることでお願いがあります』


とありました。僕にできる事って何だろうなと思っていると続けて、


『俺がそっち行っている間とか、もしかしたら雅仁こっちに戻ってきたりする場合もあるんで、小林さんにもお願いしたんですけど、それらしき人をもしこっちで見掛けたらすぐ連絡くれませんか?』


というメッセージが届きました。なるほどそういう可能性もあります。入れ違いを憂慮している菅野くんですが、ただ僕の漠然とした感覚だとそういう事が起り得る可能性は低いなと思うのです。それでも念には念を入れていた方がこの場合は良いのかも知れません。


『分かりました。小林さんには既に連絡してるんですか?』


『いえ、まだです』


『じゃあ僕から連絡しておきます。実は昨日偶然会って、連絡先教えてもらってたんですよ』


『そうでしたか。じゃあよろしくお願いします』



その後こんなやり取りがあって、意図せず小林さんに連絡する用事が出来てしまいました。まあこの機会に昨日の夜に考えていた事とか、ついでに音楽ファイルを送ったりしてみるのもいいのかなと思い、文面を考えます。送るファイルとかを結構悩んでしまって、そこそこ時間が掛かってしまったもののメールを送信した頃には<なんか、ちょっと気晴らしがしたいな>という気分になっていました。公開から僅か数日で社会現象となっていると専らの噂のあのスマホゲームを起動しながら外に出てみます。



前日に小林さんと地元の知らない場所を歩いてみた経験がなんだか新鮮だったのもあり、僕もこの機会に自分もまだあんまり歩いたことのない道を歩いてみるのも刺激になるのかなと思いはじめていました。さっき小林さんへのメールにも書いたことですが、『自分が表現したい事』ももしかしたら日々の生活を意識して見たり感じたりする事から出てくるのかも知れないなと最終的に僕は思いました。ゲームに気を取られてしまうものの、相変わらず人の少ない道でいつもは意識しないこの町にある「何か」を感じ取れるような気もします。



勿論、音楽は僕にとって『格好良いもの』で、どちらかというと僕もまだ会った事のない「雅仁くん」が恐らくはそう感じたように文化の中心に自分も行ってみて、何かを感じてくれば音楽にも表れてくるのかなとも思うところがあります。というか…即物的にですが、作曲、編曲に必要な器材とかソフトとかも都会の方がすぐ手に入れられそうですし。


<まあそれでも情熱さえあれば、どこでもできる事なのかも知れないな…>


なんて思いながら青々とした空の下、遠目に陽炎が見えるような気がするアスファルトの上をちょっと不思議な気持ちで歩いていました。

フレミングに宛てて⑨

「自分が何を表現したいか…それを作品に出来るのか…」


珍しく必死に頭を捻りながら、小林さんと歩いたその日の夜僕は創作に取り組んでいました。創作と一口に言っても色んな種類のものがありますし、規模も様々です。僕のように知り合いとか身内にひっそりと聴いてもらって感想をもらうのが嬉しくて、それ以上のところへ出してゆくにはまだ勇気が足りないというような人から、半ば趣味半ば仕事のレベルで作品をネットで発表している人とか、もっと凄い人はそこからプロの活動に繋がってゆくような人も数は多くはないかもしれませんが確実にいるわけです。作品の形式は違っていても、創作活動を続けていて共通する事はやっぱりあるんだなと僕は素朴に思うのです。



「表現したい事…って難しいよな…」



部屋で一人ぶつぶつと口に出していると母に心配されそうですが、作品を作ってゆく上で大切な事だと思うので何とかして自分の中から見出して行きたいのです。でもどうも「音」の世界でそれを表現できるのかどうかも含めて少し疑問というか、どうしたらいいのか分らない部分があります。僕はまだ自分がイメージする曲を作れるかどうかで言うと、偶然メロディーが浮かんだりするから何となく繋げていって曲にしてみるという感じで、それが自分が最初にイメージしたものと言えるのか、ちょっと分らないと言えばそうかも知れません。


『同じなのかはどうかはわからないけど、技術的な事は練習すれば何とかなるような気がする…かな…まずは『雰囲気』かな…』



何らかの意味で自分より先に進んでいるように見える小林さんから作品を作るコツのようなものをちらっと窺ってみた時の言葉を思い起こしてみます。散歩から戻る時に写真を撮りながらこの無茶振りに答えてくれたのですが、『雰囲気』というのは少しですが音楽でも思い至る事があります。アーティストによっては「空気感」という風に表現したりしますが、意外と旋律ではない部分だと音の質感とかで作品の全体的な雰囲気、空気のようなものが感じられる事があります。それが個性というアーティストもいると思うのですが、いざ自分でそれを出してみようと思うととても難しい気がします。


『何となくだけど、お前の作った曲って感じがするな』


一緒にカラオケに行ったあの友達に幾つか出来あがった曲を聴かせてみた時に言われた言葉です。個性とはまだ言い難いものかもしれませんが、もしかすると「ある傾向」のようなものは自分にはあるのかも知れません。それが何なのか…


「それかな…」



何となく近いような気がします。とりあえず僕はPCに繋いだ楽器のキーボードで適当に音を出していきながら「自分がこうしたいな」という展開に合うような音を拾っていってみます。


<何ていうか、これまでに無かったような曲にしたいよな…>


もし今みたいに常日頃思っている事が「表現したい事」なら、まあ漠然とした答えにはなっているのかも知れませんが『じゃあどんな曲だ』となると、結局自分が発見するしかないような気がします。それこそ技術的な事は幾らでも勉強は出来るんだと思いますが、実際に作品になってゆくかどうかには、何か他の事も必要だなと感じている今日この頃です。



ある程度集中して作品に向き合って、ふと


<人探しの方も続けておかないとな…>


と思います。菅野くんとの会話やメールでやり取りした事をもう一度しっかり思い出してみて、何か手掛かりを探すための「キーワード」のようなものはないか。ツイッターでフォローしてみたラッパーの発言で「フリースタイル」というラップのジャンルと、その『聖地』と言われる場所の知識を得て、


<むしろこういう田舎に住んでいる人なら割と安易にそういうところに惹かれて行ってみたくなるんじゃないかな…>


と自分に当てはめて想像してみたりしたのですが、そもそも僕は菅野くんの友人「高橋くん」の人となりははっきりとは知らないわけで、そういう判断はもしかしたら菅野くんに直接訊ねながら絞り込んでいった方が早いのかもなと思い、そこでこれまで調べてみた事を整理した文面でメールを送ってみました。普段ならすぐ返信が来るのですが、この日は夜も更けていた事もあり連絡はありませんでした。
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二人の管理人

Author:二人の管理人
ブログには珍しく二人の管理人で更新してゆくブログです。

二本松のこと、競馬のこと、これから手探りで何かを
やってゆこうと思っています。




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